経済学とは何を学ぶ学問か?経済学入門
経済学とは何を学ぶ学問か
経済学とは有限の資源の効率的な利用の仕方について学ぶ学問です。
ですから、効率性を追求するのが経済学なんだということができます。
この点、たとえば憲法や民法などの法学は正義や利益のバランス(利益衡量)といった公正性を追求しますし、会計学は適切な期間損益計算による利益の適正性を追求します。
このように学問によって何を追求するかは異なっています。
この中で経済学というのは効率性を追求しますよということです。
そして、経済学にはミクロ経済学とマクロ経済学という2つの範囲があります。
ミクロ経済学は1つの産業を対象に効率性を分析するものです。
自動車産業やコンピュータ産業などの産業ごとに効率性を追求するのがミクロ経済学になります。
そして、マクロ経済学は一国全体を対象に効率性を分析するものになります。
需要や失業率といった指標をモノサシとして効率性を分析するのがマクロ経済学になります。
ミクロ経済学では何を学ぶのか
1つの産業について効率性を分析するミクロ経済学は以下のような分野があります。
- 消費者理論
- 生産者理論
- 市場均衡
- 市場の失敗
- 国際ミクロ経済学
ここに挙げたのは5つの分野ですが、下記のリンクでは生産者理論の中の生産関数を別モノとして分けているため6つになっています。
消費者理論
経済学では商品やサービスを財といいますが、財を消費(需要)する消費者(需要者)についての理論が消費者理論です。
財には普通の財である上級財や特殊な財として下級財、中級財などがあります。
消費者理論では満足を意味する「効用」という概念を使って最適な消費がどうなるかや需要曲線などについて学習します。
需要曲線のグラフでの傾きは(価格に対する需要の反応度である)需要の価格弾力性の大きさによって変わります。
期待値と期待効用
また、消費者理論の延長としてリスクがある場合についても学習します。
リスクがある場合というのは、ある行動の結果に不確実性が存在する場合をいいます。
リスクがある場合の期待される結果のことを期待値といい、リスクがある場合の期待される効用(満足)の大きさのことを期待効用といいます。
生産者理論
財を生産する企業のことをミクロ経済学では生産者といいます。
この生産者についての理論が生産者理論です。
生産者は財を生産して販売することで利益(利潤)を得ます。
この利潤の最大化が生産者の目的です。
財を生産するとコストである費用が発生します。
費用には可変費用と固定費用があります。
そして、費用と生産量との間の関係性に関する概念として平均費用、平均可変費用、限界費用などがあります。
市場均衡の理論
消費者理論で需要曲線について学習し、生産者理論で供給曲線について学習します。
この需要曲線と供給曲線を同時に分析するのが市場均衡の理論です。
ミクロ経済学では市場均衡の理論で効率性を測るモノサシとして余剰というものを学びます。
余剰とは経済の当事者にとっての得(お得のトク)のことです。
市場の失敗
ミクロ経済学では市場のメカニズムがうまく機能すれば最適な状態が実現できるとします。
ですが、何らかの不都合があって市場の調整メカニズムが機能しない場合、そのままでは最適な状態は実現できないことになります。
これを市場の失敗といいます。
このような市場の失敗には以下のものがあります。
- 不完全競争
- 公共財
- 外部性
- 費用逓減産業
- 情報の非対称性
外部性
このうち外部性とは市場の外部で(経済の当事者である)経済主体に影響をおよぼすことです。
この外部性には良い効果と悪い効果があり、良い効果のことを正の外部性または外部経済、悪い効果のことを負の外部性または外部不経済といいます。
この外部性の是正に関する理論としてコースの定理があります。
コースの定理とは当事者の交渉により最適な状態が実現できるという定理です。
ゲーム理論
また、近年注目されている理論としてゲーム理論があります。
国際ミクロ経済学
国際経済学は海外との貿易などを分析の対象とするものです。
この国際経済学のミクロ分野が国際ミクロ経済学になります。
国際ミクロ経済学では関税をかけたときの余剰分析などを学びます。
マクロ経済学では何を学ぶのか
マクロ経済学は一国全体を対象に効率性を分析するものです。
ミクロ経済学に比べてマクロ経済学は苦手とする人が多いため、どっちから勉強するか迷ったときは、まずはミクロ経済学から勉強することをおすすめします。
マクロ経済学には以下の範囲があります。
- 国民経済計算
- 45度線分析
- IS-LM分析
- AD-AS分析
- その他のマクロ経済学の理論
- 国際マクロ経済学
- 経済史・財政学
国民経済計算
国内総生産(GDP)や国民総所得(GDI)などについての統計のお話が国民経済計算です。
45度線分析
財市場を分析の対象とするのが45度線分析です。
45度線分析では財市場の総需要と総供給から最適な国民所得を求めていきます。
IS-LM分析
IS-LM分析は、財市場と貨幣市場の均衡を分析するものです。
財市場の均衡を表すのがIS曲線、貨幣市場の均衡を表すのがLM曲線になります。
AD-AS分析
AD-AS分析とは総需要・総供給分析ともいい、財市場と貨幣市場と労働市場の均衡を分析するものです。
財市場と貨幣市場の均衡を表すのがAD曲線、労働市場の均衡を表すのがAS曲線になります。
労働市場についてはケインズと古典派で考えが異なるため、2つを分けて理解する必要があります。
その他のマクロ経済学の理論
その他のマクロ経済学の理論として、物価と失業、経済成長などについて勉強します。
国際マクロ経済学
国際マクロ経済学では、為替レートの変動などを学びます。
為替の変動要因として物価や金利などで為替レートは変動します。
そして、長期の為替の変動についての理論が購買力平価説、短期の為替の変動についての理論が金利平価説になります。
経済史・財政学
経済史では経済学説史として、マクロ経済学における学説を対比して学習します。
また、財政学と経済学は非常に近い学問であり、経済学のテスト(試験)であっても財政学から出題されることがあります。
たとえば、ビルトインスタビライザーは財政の機能の具体例ですが経済学の範囲として出題されることもあります。
以上が経済学で何を学ぶのかという経済学の範囲のお話になります。