MBO(マネジメント・バイ・アウト)の目的とは:ベネッセのTOBによるMBO
ベネッセのMBOの実施
ベネッセ(ベネッセホールディングス)は2023年11月にMBO(経営陣による買収)を発表しました。
ベネッセホールディングスは、教育関連事業を中心に展開する企業で、子ども向け通信教育「進研ゼミ」などで知られています。
ベネッセのMBOとそのための手段として用いられたTOB(株式公開買い付け)について解説します。これらの用語の意味をわかりやすく説明したうえで、ベネッセが何のためにMBOをするのかについて解説します。
MBOとは(MBOの意味と似た用語)
MBO(マネジメント・バイ・アウト)はManagement Buy Outの略で、経営陣が自社の株式を買い取ることを指します。MBOの目的は、経営の自由度を確保し、企業価値を高めることです。経営陣が自社の株式を保有することで、経営の意思決定がスムーズになり、企業の成長を促進することが期待されます。
EBOについて
なお、似た言葉にEBO(エンプロイー・バイ・アウト)があります。
EBO(エンプロイー・バイ・アウト)は、従業員が自社の株式を買い取り、事業の買収や経営権の取得をする「従業員による企業買収」を指します。MBOとEBOの違いは、買収主体が経営陣か従業員かという点になります。
TOBとは(TOBの意味)
ベネッセはMBOを実行するにあたり、TOBという手段を用いました。
TOB(テイク・オーバー・ビッド)はTake Over Bidの略であり、日本語では株式公開買付けと言います。一般的には被買収企業の株式を、価格や株数、買付期間を公開して、株式市場を通さず直接株主から買い付けるM&A(合併・買収)の手法を意味しています。TOBはM&Aための手段であり、企業の成長戦略や事業再編の一環として行われます。
ベネッセのMBO(TOB)の目的
ベネッセのMBO(TOB)の目的は、長期的な企業成長のためということになります。
MBOは、上場を廃止し経営の自由度を確保して企業価値を高めることを目的として行われます。MBOにより、ベネッセは自社の経営方針を(市場や株主からうるさく言われることなく)より自由に決定できるようになり、新たな事業展開や事業再編を進めることが可能となります。
MBOを実施する企業の特徴
MBOを行う企業は、調子の悪い企業が多いです。このような企業は株主からの突き上げが激しくなるため、それを回避するために、自分達(経営陣)で株を所有し、上場を廃止することでより自由度の高い経営を行うことを目的としています。
ベネッセは少子化の影響により進研ゼミや未就学児向けの「こどもちゃれんじ」で苦戦しており、多角化したオンライン学習プラットフォームのUdemyも伸び悩んでいるため、今回のMBOをすることで経営の自由度を確保し、再建を図ることを目的としていると思われます。
他にMBOを実施した企業の例には、青汁のキューサイやアメリカのデルコンピュータなどがあります。
MBOの具体的な手段:TOBやLBO
ただ、経営陣は自社を買収するにも単独では資金的余裕はないことが多く、MBOを実施する場合、資金の出し手であるファンドなどと組んで行うことが多いです。具体的には、資金の出し手であるファンドなどと協力してTOBやLBOという手段により実施されます。実際、ベネッセのMBOでもベネッセ創業家がヨーロッパの投資ファンドEQTと組んでファンドがTOBをする形で実施されています。
LBO(レバレッジド・バイ・アウト)とは
なお、LBO(レバレッジド・バイ・アウト)とは、M&Aの手法の1つで、買収の相手先の企業の資産やキャッシュフローを担保にして、借金をした資金により相手先の企業を買収することを指します。
LBOの特徴は、借金を使うことで買収をする側の企業は少ない元手で買収できる点にあります。これにより、買収側は自社よりも大きな会社を買収することが可能となります。
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MBOの長期的なゴールは
そして、MBO達成後に経営再建が上手くいった暁には、再上場することでファンドは出資した資金を回収できます。ベネッセも経営再建後は再上場を目指すものと思われます。
このような再上場が上手くいったケースはファミリーレストランのすかいらーくがあります。すかいらーくは2006年にMBOを実施し、2014年に再上場を果たしています。
まとめ
ベネッセのTOBとMBOは、企業の長期的な成長戦略や事業再編を目的として行われました。これにより、経営の自由度を確保し、企業価値を高めることを目指しています。MBO実現後は上場廃止となりますが、長期的には再上場を目指すものと思われます。