企業・産業研究

M&A(合併買収)の意味とは|TOB・LBO・MBOというM&Aの3つの手法

M&Aのイメージ

M&A(合併買収)とは

M&Aとは、企業の合併・買収のことです。

合併とは、2つの会社が1つの会社になることです。

これに対し、買収とは、他の会社を乗っ取ることをいいます。

ですが、(乗っ取る)自分の会社と(乗っ取られる)相手の会社という2つの会社が1つの会社になるという意味では、合併とよく似ているので、2つをまとめて合併・買収といい、英語のMergers(合併)とAcquisitions(買収)の頭文字をとってM&Aといいます。

このM&Aは、戦略的提携や合弁と同じく、(ヒト・モノ・カネ・情報という)経営資源を外部から獲得するための方法の1つであるとされています。

M&A(合併買収)の目的

M&Aのイメージ

このM&Aは、企業の多角化のために行われます。

いろんな分野に進出することが多角化ですが、そのための手段がM&Aはになります。

ただし、社会的には、合併や買収によって巨大企業が誕生すると公正な競争が阻害されるおそれがあります。

これは(寡占市場における協定である)カルテルや独占企業の場合のように、価格が高く設定されて消費者に不利益になるということを意味します。

M&A(合併買収)の種類

M&Aの種類には、友好的M&A敵対的M&Aがあります。

友好的M&Aとは、お互いが相思相愛で合併などを行うものです。

新日本製鐵と住友金属が一緒になって新日鐵住金(現在の日本製鉄)になったケースは友好的M&Aの例になります。

これに対し、敵対的M&Aとは、買収される側の意思にかかわらず無理やり買収を行うものです。

この敵対的M&Aの例として日本で一番有名なのは、旧ライブドアによるニッポン放送の買収です。

ホリエモンこと堀江貴文さんが率いる旧ライブドア(NHN Japan、ネイバージャパンと統合し、現在は株式会社LINE)がフジテレビの支配を目的としてフジテレビの株をたくさん持っていたニッポン放送というラジオ局に対し敵対的買収を仕掛けました。

当然、ニッポン放送はそれを嫌がって抵抗したわけですが、当時はワイドショーに取り上げられるなどしてお茶の間をにぎわせました。

この買収は結局失敗に終わりましたが、ある意味日本で一番有名な敵対的買収劇だといえます。

M&A(合併買収)の手法

マージする鉄道

次に、M&Aをするときのやり方について紹介します。

M&Aの手法はTOB、LBO、MBOとすべてアルファベット3文字であらわされます。

TOB:テイク・オーバー・ビッド

TOBの定義

TOBとは、株式公開買付けのことです。

被買収企業の株式を、価格や株数、買付期間を公開して、株式市場を通さず直接株主から買い付けるM&Aの手法がTOBになります。

そもそもM&Aのゴールは何かというと、ターゲットである相手の会社を子会社にすることです。

そのためには発行済の株式のうち過半数である50%超の株を取得する必要があります。

この50%超というゴールに向かって、株を買っていくわけですが、ターゲットが上場している会社の場合、証券会社を通じて証券取引所で上場されているターゲットの会社の株を普通に買っていけばいいといえます。

このように株式市場を通じて株を買っていき50%を超えたらゴールというのが普通の方法になります。

これに対し、TOBとは、ターゲットである被買収企業の株式を、価格(いくらで)株数(どれだけの量を)、買付期間(いついつまでに)と公表して、株式市場を通さず、直接株を持っている株主さんから株を買い付ける手法になります。

TOBのメリット

なんだかTOBというのは、めんどくさい方法のような感じがしますが、どうしてこんなやり方をするかというと、TOBを仕掛ける側にとってみれば、市場価格より高い価格を提示することで、大量の株式取得が可能となるからです。

また、売る方の株主としても、高い価格で売れるので、有利になるというメリットがあります。

ちなみに、テイク・オーバー・ビッドのビッドというのは、現在の株価のことを意味します。

ビッドをオーバーする値段でテイクする、現在の株価を越える価格で取得するからテイク・オーバー・ビッドといいます。

その意味で、テイク・オーバー・ビッド(TOB)と株式公開買付は直訳の関係になっていません。

TOBはどちらかというと技術的な面に注目したテクニカルな名前の付け方ですが、株式公開買付の方は、手法全体の内容に即した名前になっていますね。

また、TOBにはもう1つ別のメリットがあります。

どちらかというとこちらの方が重要ですが、TOBでは、取得数が目標に達しないときは、買付けの提案を取り消すことができます

これは、TOBを仕掛ける側にとっては、ダメなら取消すことができるので大きなメリットになります。

さきほどライブドアの例を挙げましたが、それと同じような時期に楽天がTBSの支配を目的として、買収を仕掛けました。

このとき楽天はTOBを使わずに、普通に株を買い進める形で買収を行いました。

ですが、結局50%超のTBS株を集めることができずにこの買収は失敗に終わりました。

TOBであれば、「株の集まりが悪いなぁ」というときは、買付けの提案自体をを取り消すことができるのですが、普通に買い進めていたため、楽天の手元には子会社にできない大量のTBS株が残ってしまいました。

その結果、楽天はTBSの株の処分で大きな損失を出してしまいました。

こういったことがTOBなら回避できるというのがTOBの大きなメリットになります。

TOBの具体例

日本の株式市場においても、TOBは広く実施されています。

たとえば、2006年には製紙会社の王子製紙が北越製紙に対する敵対的M&AでTOBを行ったが失敗しました。

また、2013年には流通大手のイオンは経営不振に陥ったダイエーを救済するためダイエーと友好的M&Aを実施しましたが、その手段としてTOBが利用されました。

LBO:レバレッジド・バイ・アウト

LBOの定義

LBOは、ソフトバンクが携帯ビジネスに進出するときに利用した手法です。

また、同じくソフトバンクが米国の携帯会社であるスプリントを買収するときに使った方法でもあります。

LBOというのは、被買収企業の資産やキャッシュフローを担保に、借入を行い、相手を買収するM&Aの手法です。

ここでいうキャッシュフローとは、買収した携帯ビジネスによって将来入ってくるお金のことです。

M&Aをするにはお金が必要ですが、いまから買収しようとする買収先の企業の資産などを担保にしてお金を借りて、そのお金で買収をすることをLBOといいます。

いまから買収しようとする他人の信用でお金を借りるというちょっとずる賢いようなやり方がLBOになります。

LBOのメリット・デメリット

LBOのメリット(長所)は、借入によって買収するので、もともと持っている手元資金は、少ない資金で買収することができます

これに対し、LBOのデメリット(短所)は、買収後の負債比率が上昇するため、債券の格付が低くなりやすいといえます。

買収のために借りたお金は、会社の借金ですから、買収後には返さなければいけません。

そうすると、会社の規模に占める負債の割合である負債比率がどうしても上昇することになります。

負債の比率が高いと会社が危ないとみられがちになり、(会社のランクを表す)格付けが下がることになります。

そして、格付けが下がると新たに借入をするときに高い金利を払わなければいけなくなったり、間接的にですが、株価が下がる原因になったりもします。

これがレバレッジド・バイ・アウト(LBO)のデメリットです。

ちなみに、レバレッジというのは「てこの原理」の「てこ」のことです。

また、バイアウトは買収です。

てこの原理のように、小さいお金で大きな買収を行うもの、それがレバレッジド・バイ・アウト(LBO)になります。

MBO:マネジメント・バイ・アウト

MBOというのは、経営陣が経営権を取得して独立するM&Aの手法です。

マネジメントというのは、経営陣のことです。

経営陣が行う買収だからマネジメント・バイ・アウトといます。

ですから、これはM&Aの手法というよりは、誰がM&Aを行うのかというお話です。

ちなみに、従業員が主体となって買収を行うことは、エンプロイー・バイ・アウト(EBO)といいます。

ただ、経営陣は雇われサラリーマンのことが多いので、お金を持っていません。

また、オーナーであっても上場している会社を自己資金だけで買収することは無理があります。

そのため、お金が足らない場合は、手段としてLBOによりお金を借りて行うこともあります。

実際にMBOを実施した企業としてはファミリーレストランのすかいらーくや青汁のキューサイ、アメリカのDELLコンピューターなどがあります。

また、マンガ島耕作シリーズの中の「社長島耕作」では、このMBOにより独立するという話が登場します。

物語の中に登場する会社の業績は悪くありませんでしたが、現実にMBOを選択する企業は業績が振るわないところもあるようです。

業績が下がり株価が低迷すると、株主からうるさいことをいわれたくない上場企業がMBOによって非上場化して、一般株主を締め出してしまうというケースもあります。

2018年にアメリカの自動車メーカー、テスラのCEOイーロン・マスクが、MBOによって非上場となることを検討していると発表し、その後撤回しましたが、これも市場からうるさくいわれたくないという考えがあったのではないかと思われます。