損小利大は嘘(間違い)か|見切り千両・利食い千人力とは|株で嘘、勝てない、間違いなのはどっち?

株式投資

損小利大(見切り千両)の意味とは

損小利大(読み方は「そんしょうりだい」)とは、相場格言の一つであり、株式投資やFXで損失はなるべく小さくする一方で、利益はなるべく大きくするのが望ましいという考え方です。

早めの損切は千両の価値があるという意味で見切り千両(読み方は「みきりせんりょう」)ともいいます。

また、英語で「take our profits slowly(ゆっくり利食いしろ)」「cut off losses at once(すぐにロスカットしろ)」というそれぞれの頭文字をつなげてTOPS COLA(読み方は「トップスコーラ」)というのも損小利大(見切り千両)とほぼ同じ意味だといえます。

損小利大(見切り千両)やTOPS COLA(トップスコーラ)の考え方は、株価のトレンドにしたがってトレードするトレンドフォローの手法においてあてはまるといわれています。

損小利大(見切り千両)の相場格言にしたがいトレードすると、早めの損切を行うことになるため、勝率は低くなります。

一方で、利益を大きく伸ばす可能性があるため、上手くいけばトータルの総利益(総損益)を増やし、プロフィットファクター(総利益/総損失)、ペイオフレシオ(平均利益/平均損失)の改善が期待できます。

利食い千人力の意味とは

一方で、利食い千人力(読み方は「りぐいせんにんりき」)という相場格言もあります。

利食い千人力とは、利益が出ている場合はすぐに決済するのが望ましいという考え方です。

この利食い千人力は早めの利食い(決済)を行うことから、利益の確定をなるべく遅くする損小利大(見切り千両)とは、対になる(反対の)相場格言だといえます。

利食い千人力を行った場合のトレード手法の成績は、損小利大(見切り千両)の反対になります。

つまり、利益は小さくとも勝ちは勝ちですから、小さな勝ちを積み重ねることで勝率は高くなります。

一方で、利食い千人力によりトレードをすると、負けているときは損失(含み損)を抱えたポジションを長く保有することになります。

そのため、含み損を抱えたまま長期間持ち続けられる銘柄が出てしまうのも利食い千人力の特徴です。

このように含み損を抱えたまま長期間保有されている株を株式投資では「塩漬け株」といいます。

コツコツと小さな勝ちを積み重ねていっても、負けるときに大きく負けてしまうとため、利食い千人力の手法ではトータルの総利益(損損益)が伸びず、プロフィットファクター(総利益/総損失)、ペイオフレシオ(平均利益/平均損失)も悪くなる傾向にあります。

損小利大と利食い千人力どちらが嘘で勝てない(間違いな)手法か

このように損小利大(見切り千両)と利食い千人力は互いに対となっている矛盾する手法といえるため、損小利大と利食い千人力のどちらかが(相対的な意味で)勝てない(間違いな)手法であるといえます。

もちろん、株やFXなどの投資対象の違いや投資期間の違い、トレード戦略の違いにより結果は変わってきますが、ここでは株式投資を前提に損小利大(見切り千両)と利食い千人力のどちらが間違いなのかを検証してみます。

損小利大(見切り千両)と利食い千人力の手法の成績を株で検証してみる

たとえば、出来高と株価の相関関係によると、出来高が最大となった後、株価は高くなる傾向があります。

過去200日間で出来高が最大となった日の終値から20日後、40日後、60日後の株価の推移を日本を代表する株価指数である東証株価指数(TOPIX)で確認してみます。

重複分を除くため過去60日間で出来高が最大とはなっていないことを条件に加えるとします。

検証期間は1989年4月から2019年6月までの30年間で、この場合の株価の推移は以下のようになりました。

日付20日後株価40日後株価60日後株価
1990/10/19-5.3%-2.1%-6.2%
1991/2/143.4%4.6%4.0%
1992/8/28-2.2%-6.6%-6.2%
1993/3/915.8%21.0%24.8%
1994/2/10.1%-3.3%-2.6%
1994/6/10-1.9%-2.6%-3.6%
1995/7/74.1%9.9%10.8%
1997/11/20-2.1%-0.1%1.8%
1998/9/11-4.5%0.7%6.4%
1999/3/188.6%5.6%12.3%
2001/3/96.1%12.5%5.6%
2001/6/8-3.3%-7.4%-16.3%
2001/12/140.1%-2.5%8.1%
2003/6/98.5%6.9%17.5%
2004/3/129.3%1.3%4.1%
2005/3/110.1%-5.0%-5.1%
2005/9/98.7%15.0%21.3%
2007/2/28-2.4%-3.7%-1.6%
2007/8/9-6.8%-1.6%-6.5%
2008/10/109.0%-2.7%-3.2%
2009/6/12-8.1%0.7%-1.6%
2010/12/104.7%6.3%4.8%
2011/3/140.6%-0.8%-3.5%
2012/3/9-2.7%-9.8%-15.3%
2012/12/195.8%14.7%23.7%
2013/4/511.5%5.6%9.9%
2014/11/44.3%2.4%1.7%
2017/11/9-1.5%4.4%-3.5%

株価の推移は20日後、40日後、60日後ともに、プラス(値上がり)で推移してますが、日数が長くなるにつれて1回あたりの平均利益は2.1%、2.3%、2.9%と増えていきます。

これに対し、勝率は61%、54%、54%と期間が短い方が良くなっています。

では、このような検証結果をベースとして、損小利大(見切り千両)の手法をあてはめてトレードした場合と利食い千人力の手法をあてはめてトレードした場合で、成績の違いを確認してみます。

損小利大(見切り千両)の手法による成績

上記の株価の推移に損小利大(見切り千両)の考え方をあてはめてみます。

まず、損失の場合は、20日後、40日後、60日後の区切りのときに損失となっていれば、直ちに手仕舞い(決済)し、損失を確定するとします。

一方で、利益の場合は、株価がプラスで推移しており利益(含み益)である限りは継続して保有し、最長で60日後に手仕舞い(決済)するとします。

以上のような手法でトレードした場合の売買成績は以下のようになります。

日付損小利大
1990/10/19-5.3%
1991/2/144.0%
1992/8/28-2.2%
1993/3/924.8%
1994/2/1-3.3%
1994/6/10-1.9%
1995/7/710.8%
1997/11/20-2.1%
1998/9/11-4.5%
1999/3/1812.3%
2001/3/95.6%
2001/6/8-3.3%
2001/12/14-2.5%
2003/6/917.5%
2004/3/124.1%
2005/3/11-5.0%
2005/9/921.3%
2007/2/28-2.4%
2007/8/9-6.8%
2008/10/10-2.7%
2009/6/12-8.1%
2010/12/104.8%
2011/3/14-0.8%
2012/3/9-2.7%
2012/12/1923.7%
2013/4/59.9%
2014/11/41.7%
2017/11/9-1.5%

損小利大(見切り千両)の手法では、平均利益は3.1%でした。

これはもともとの株価の推移のどの日数よりも改善しています。

一方で、勝率は43%ともともとの株価の推移よりも悪化しています。

以上の成績は、勝率が低くなり、利益は伸びるという損小利大(見切り千両)の特徴の通りとなっているといえます。

利食い千人力の手法による成績

では、今度は利食い千人力の考え方をあてはめて検証してみます。

決済のルールは損小利大(見切り千両)の反対で、利益の場合は、20日後、40日後、60日後の区切りのときに利益となっていれば、直ちに手仕舞い(決済)し、利益を確定します。

一方で、損失の場合は、株価がマイナスで損失(含み損)である限り継続して保有し、最長で60日後に手仕舞い(決済)するとします。

以上のような手法でトレードした場合の売買成績は以下のようになります。

日付利食い千人力
1990/10/19-6.2%
1991/2/143.4%
1992/8/28-6.2%
1993/3/915.8%
1994/2/10.1%
1994/6/10-3.6%
1995/7/74.1%
1997/11/201.8%
1998/9/110.7%
1999/3/188.6%
2001/3/96.1%
2001/6/8-16.3%
2001/12/140.1%
2003/6/98.5%
2004/3/129.3%
2005/3/110.1%
2005/9/98.7%
2007/2/28-1.6%
2007/8/9-6.5%
2008/10/109.0%
2009/6/120.7%
2010/12/104.7%
2011/3/140.6%
2012/3/9-15.3%
2012/12/195.8%
2013/4/511.5%
2014/11/44.3%
2017/11/94.4%

利食い千人力の手法の場合、平均利益は1.9%となってしまいました。

もとの株価の推移のどの日数よりも悪化していますね。

一方、勝率は75%とかなり改善しているといえます。

このような成績は、勝率が高くなるが、負けるときに大きく負けるため、利益は伸び悩むという利食い千人力の特徴の通りとなっています。

損小利大(見切り千両)と利食い千人力の比較(まとめ)

以上から、損小利大(見切り千両(≒TOPS COLA(トップスコーラ)))と利食い千人力を比べた場合、トレンドフォローの手法の成績としては損小利大(見切り千両)のほうが売買成績として優れているといえます。

そのため、(1つの戦略でみただけですが)日足ベースの株のスイングトレードでは、利食い千人力のほうが(相対的に)勝てない手法だといえる結果となりました。