上級財(奢侈財・必需財)と下級財と中級財の例|需要の所得弾力性とは
上級財(奢侈財・必需財)と下級財と中級財の例
経済学において商品のことを財といいます。
この財は、需要と所得との関係で3つに分類できます。
その分類が、上級財(正常財)と下級財(劣等財)、そして中級財(中立財)という分類です。
上級財が普通の財で、下級財と中級財はちょっと特殊な財になります。
ここではこれらの財(上級財・下級財・中級財)の具体的な定義と例について説明します。
また、上級財はさらに細かく奢侈財(しゃしざい)と必需財に分類されます。この必需財・奢侈財の例について見たうえで、これらの財の見分け方について説明します。
上級財(正常財)の定義と例
上級財(正常財)とは、所得が増えると消費量も増える財です。
所得が増えてお金持ちになれば、普通、消費は増えると考えられるので、消費が増える上級財は普通の財だといえます。
この上級財の例はバターがあります。
バターは、所得が増えればバターの消費も増えると考えられるので上級財の例だといえます。
(なお、変わったところでは暇な時間である余暇も上級財だとされます。余暇は労働との関係で出てきます。所得が増えてお金持ちになると、もう働かなくても良くなるため、労働時間が減って余暇の時間が増えます。そのため、余暇はお金持ちになると消費(時間)が増える上級財だといえます)
さきほど述べたように、この上級財は、奢侈財(しゃしざい)と必需財に分類されます。(これらの内容はまた後で紹介します。)
下級財(劣等財)の定義と例
下級財(劣等財)は、所得が増えると消費量が減る財です。
たとえば、マーガリンやインスタントラーメンが身近な下級財の例になります。
所得が少ないとき、インスタントラーメンで食いしのぐということをすると、インスタントラーメンの消費は増えることになります。
たとえば、売れない芸人さんがいつもインスタントラーメンばかり食べているとすると、インスタントラーメンの消費量は大きくなります。
一方で、所得が増えてくると、もっといいものが食べられるので、インスタントラーメンの消費は減ることになります。
芸人さんが売れてきて、今日は六本木で焼き肉、明日は銀座で寿司というようになると、焼き肉を食べた日はインスタントラーメンは食べませんから、インスタントラーメンの消費量は減っていきます。
したがって、インスタントラーメンは所得が増えると、消費が減るので、下級財の例だといえます。
また、マーガリンも下級財の例だといわれています。
いまの感覚では、あまりわからないですが、昔の人にはバターとマーガリンで、バターの方が高級だったので、所得が増えると人々はマーガリンの消費を減らして(あこがれの)バターの消費を増やすことになります。
そのため、マーガリンも所得が増えると消費が減る下級財の例に該当します。
(上級財の例がいろいろある普通の財の中でも特にバターだったのは、こちらのマーガリンと対比するためです。)
ですから、上級財と下級財の見分け方は、所得が増えたときに消費が増えれば上級財、消費が減れば下級財になります。
(ちなみにこの所得は名目所得を価格で割った実質所得で判断します)
また、下級財の一種にギッフェン財という財があります。
ギッフェン財というのは、価格が上がると、消費が増えるという特殊な財です。
中級財とは、定義と中級財の例
また、財にはもう1つ中級財というものがあります。
中級財とは中立財ともいい所得が増えても消費量が変化しない財のことです。
たとえば中級財の例としては、(お金持ちでも貧乏人でも自由に消費できる)空気や(お金持ちになっても健康上の理由から消費を増やさないと考えられる)食塩などがあります。
これらの空気や食塩は、所得が増えても消費量が変化しないと考えられるため中級財の例だといえます。
奢侈財と必需財
このように財は上級財と下級財、中級財に分けられます。
そして、上級財はさらに奢侈財と必需財に区分されます。
奢侈財(しゃしざい)の定義と例
奢侈財とは、所得が増えるとそれ以上に消費が増える財です。
奢侈とは「贅沢(ぜいたく)」という意味なので、奢侈財とは贅沢財、つまりぜいたく品のことです。
奢侈財は、上級財の一種ですので、所得が増えれば、消費が増えますが、所得の増加率と消費の増加率を比べると、所得の増加率よりも消費の増加率の方が高い財が奢侈財になります。
奢侈財:所得の増加率 < 消費の増加率
たとえば、海外旅行やブランド品が奢侈財の例になります。
海外旅行に行くには、ある程度お金が必要になります。
このある程度という水準をよりもお金を持っていない人たちは、海外旅行にはまったく行かないことになります。
これに対して、(この水準を上回っている)お金持ちはけっこう頻繁に海外に行ったりします。
たとえば、いままで海外旅行にあまり行ったことのない人が、所得が2倍になって、このある程度という所得の水準を超えると、いままでの2倍以上に海外旅行に行く頻度は増えると考えられます。
したがって、海外旅行は所得が増えると、それ以上に消費が増えるぜいたく品であり奢侈財の例にあたると考えられます。
必需財の定義と例
必需財とは、所得が増えてもそれほど消費は増えない財です。
必需財は、上級財の一種であり、所得の増加率と消費の増加率で、所得の増加率の方が大きい財のことです。
必需財:所得の増加率 > 消費の増加率
必需財の身近な例はおコメとかトイレットペーパーなどです。
たとえば、最近はトイレットペーパーにも、セレブ向けの高級トイレットペーパーというものもありますが、ここではトイレットペーパーの品質に違いはないと仮定をします。
とすると、たとえお金持ちでも使うトイレットペーパーの量に違いなんてそんなにはないので所得が2倍になったとしても、トイレットペーパーの消費が2倍になるとは考えられません。
お金持ちになったからといって、いままでの2倍トイレットペーパーをまいておしりをふくかというとそんなことはありませんね。
したがって、トイレットペーパーは所得が増えても、それほどは消費は増えない必需財の例だということになります。
需要の所得弾力性
需要の所得弾力性の定義
この上級財、下級財、中級財、そして、上級財の中の奢侈財、必需財は需要の所得弾力性というものの関係で考えることができます。
需要の所得弾力性というのは、所得の変化率に対する需要の変化率の大きさをあらわす値です。
つまり、需要の変化率を所得の変化率で割ることにより需要の所得弾力性は計算されます。
需要の所得弾力性=需要の変化率÷所得の変化率
このように所得が変化したときに、需要がどのくらい変化するのかを表す値が需要の所得弾力性になります。
需要の所得弾力性と各財の関係
では、この需要の所得弾力性と各財の関係について考えていきます。
上級財の需要の所得弾力性:正
まずは、上級財からみてみます。
上級財は、所得が増えたときに需要が増える財です。
ですから、所得が増えると所得の変化率も需要の変化率もともにプラスに変化します。
そのため、上級財の需要の所得弾力性は正の値(プラス)になります。
反対に、所得が減って所得の変化率がマイナスのときは、上級財は需要の変化率もマイナスになるので、需要の所得弾力性はこの場合も正(プラス)の値になります。
下級財の需要の所得弾力性:負
これに対し、所得が増えたときに需要が減るのが下級財です。
所得が増えるということは、所得の変化率はプラスなのに対し、需要が減るので需要の変化率はマイナスになります。
よって、下級財の需要の所得弾力性は負(マイナス)になります。
反対に、所得が減って所得の変化率がマイナスのときは、需要の変化率は需要が増えプラスになるので、需要の所得弾力性はこの場合も負(マイナス)になります。
中級財の需要の所得弾力性:ゼロ
では、中級財はどうでしょうか。
中級財とは、所得が増えても需要がピクリとも反応しない財です。
そのため、所得の変化率がプラスでもマイナスでも、需要の変化率はゼロとなります。
よって、中級財の需要の所得弾力性はゼロになります。
奢侈財の需要の所得弾力性:1より大きい
では、今度は、上級財の中で奢侈財と必需財について考えます。
所得が変化したときに、それ以上に需要が大きく変化するのが奢侈財ですから、奢侈財の需要の所得弾力性は1よりも大きくなります。
奢侈材と必需財については所得と需要の変化率を数字で考えてみます。
たとえば、所得が10%増加したときに、需要がそれよりも大きい20%増加するのが奢侈財です。
この場合の需要の所得弾力性は、20%÷10%=2と計算できます。
このように奢侈財の需要の所得弾力性は1よりも大きくなります。
必需財の需要の所得弾力性:1より小さい
これに対し、所得が変化したときに所得の変化率ほどには需要は変化しないのが必需財です。
この場合、必需財の需要の所得弾力性は1よりも小さくなります。
たとえば、所得が10%増加したときに、需要がそれよりも小さい5%しか増加しないのが必需財になります。
この場合の需要の所得弾力性は、5%÷10%=0.5と計算されます。
これが需要の所得弾力性と各財の関係になります。
(まとめ)需要の所得弾力性と上級財(奢侈財・必需財)・中級財・下級財の関係図
上級財、下級財、中級財の見分け方はお金持ちになったときに消費量が増えるか、減るか、変わらないかで判断します。
これを需要の所得弾力性の関係であらわすと以下のようになります。
- 上級財:正になる
- 奢侈財:1より大きい
- 必需財:1より小さい
- 下級財:負になる
- 中級財:ゼロになる
そして、この関係を数直線の図で表すと以下のようになります。