貸借対照表とは何か|会計学でBSは何の略?貸借対照表の見方、構造、内訳について

会計学

貸借対照表とは何か

貸借対照表(Balance Sheet)とは期末(または期首)における会社の財政状態を表す財務諸表です。会計学では貸借対照表はよくB/S(ビーエス)とも略されますが、ここでいう会社の財政状態というのは、資金の調達源泉資金の運用状態を意味します。

期首と期末=会計期間のはじまりと終わり

言葉の説明ですが、会計学においてまず期末というのは、会計期間の最後のことを意味します。ですから、たとえば4月1日から次の年の3月31日までを1会計期間だとすると、この場合の期末は3月31日になります。これに対し、期首というのは、会計期間のはじまりのことを指します。この例でいえば、4月1日が期首になります。

4/1     3/31
―|―――――――|――→
期首      期末

財政状態とは:調達源泉と運用状態

そして、財政状態は資金の調達源泉と運用状態のことです。

わかりやすくいえば調達源泉というのは、どこからお金を引っ張ってきているかということであり、運用状態というのは、そのお金を何に使っているかということを表します。

ですから、調達源泉はどこからお金を引っ張ってきているかということなので、今手元にあるお金が借金なのか、株主からの出資金なのかということを意味します。具体的な勘定科目でいうと、負債、純資産(または資本)が調達源泉になります。

そして、運用状態というのは、わかりやすくいうとお金を何に使っているかということを意味します。

ですから、勘定科目でいえば、現金、商品、土地などの資産が運用状態になります。

そして、これらの調達源泉と運用状態を表の形にまとめたものが貸借対照表(B/S)になります。

貸借対照表(B/S)では、運用状態を表す資産は、左側である借方(かりかた)側に書かれ、調達源泉を表す負債と純資産は、右側である貸方(かしかた)側に書かれることになります。

貸借対照表の構造:資産=負債+純資産

そのため、貸借対照表の左右はパズルのような構造をしています。

つまり、貸借対照表は会計の帳簿記録の方法である簿記の性質上、左側(借方側)である資産の合計が右側(貸方側)である負債と純資産の合計と等しくなるため、

資産 = 負債 + 純資産
純資産 = 資産 - 負債

という関係が成立します。

これが貸借対照表の基本的な枠組み(構造)になります。

貸借対照表の内訳

さきほどみたように、貸借対照表の内訳である貸借対照表の項目には、資産、負債、純資産があります。

資産は、流動資産、固定資産、繰延資産からなります。

流動資産には、現金や売掛金、棚卸資産などがあります。

固定資産には、建物などの有形固定資産や特許権などの無形固定資産などがあります。

また、繰延資産は本来的には資産といえないような特殊な資産です。

一方で、負債は、流動負債、固定負債からなっています。

流動負債には、支払手形や買掛金があります。

固定負債には、退職給付引当金や長期借入金などがあります。

また、純資産は、株主資本とそれ以外の項目から構成されます。

なお、資産や負債について流動項目と固定項目に分類する基準は、正常営業循環基準1年基準という基準が用いられます。

以上が会計学における貸借対照表の基本的なお話になります。

貸借対照表の性質

次に、会計学における貸借対照表(B/S)の性質についてです。

ここでは財務諸表としての貸借対照表(B/S)の位置づけについて考えてみます。

難しめの表現になりますが、貸借対照表(B/S)は、期間損益と期間損益を結ぶ連結環としての性質を有するとされます。

期間損益というのは、損益計算書(P/L)で計算される損益のことです。

では、貸借対照表が、期間損益と期間損益を結ぶ連結環となるというのはどういうことでしょうか。

イメージでいうと、貸借対照表は、損益計算書のつなぎにすぎないんだという考え方です。

その理由について考えてみます。

貸借対照表には、繰延資産などのように本来資産とはいえないものも計上されています。

繰延資産というのは、本来は費用であり、例外的に貸借対照表(B/S)に計上することが認められているにすぎない項目です。

なので、本来は貸借対照表(B/S)には計上できないということになります。

この繰延資産のような項目を認める理由は、適切な期間損益計算のためであるとされます。

利益をきちんと計算するためなんだというのが適切な期間損益計算の意味になります。

このように貸借対照表(B/S)は、各期の期間損益計算を適切に行うための調整項目を一時的に計上しておくために利用される場合があります。

つまり、本当は貸借対照表(B/S)の項目じゃないんだけど、一時的に貸借対照表(B/S)にのっている項目があるということです。

それがどうしてかといえば、その理由は適切な期間損益計算のため、つまり損益計算書(P/L)の数値を正しく表すためになります。

汚い言葉でいえば、貸借対照表(B/S)は適正な期間損益を計上するするためのゴミ捨て場(はきだめ)になっているということです。

そのため、貸借対照表(B/S)は、損益計算書(P/L)のつなぎにすぎないんだということになります。

このことを指して、貸借対照表(B/S)は期間損益と期間損益を結ぶ連結環であるといいます。

では、この貸借対照表(B/S)は、損益計算書(P/L)のつなぎにすぎないんだというイメージを別の例で考えてみます。

たとえば、商品は貸借対照表の資産ですが売れれば売上原価になります。

売上原価は費用として損益計算書(P/L)にのっていきます。

このように商品が売れれば損益計算書(P/L)に載っていくけど、売れなければ資産としてそのまま貸借対照表に残り、次の期以降に売れたときに費用となることになります。

商品

売れた分→損益計算書(P/L)の費用

売れ残り→貸借対照表(B/S)の資産

このように貸借対照表(B/S)は売れ残りである商品を一時的に資産として載せておくに過ぎないということになります。

これが貸借対照表(B/S)は、損益計算書(P/L)のつなぎにすぎないんだというイメージになります。

このことを難しい言葉でいったのが、期間損益と期間損益を結ぶ連結環という言葉になるわけです。

このような考え方にたった場合、貸借対照表(B/S)は単なる損益計算書(P/L)のつなぎにすぎないので貸借対照表(B/S)は企業の財産の現在価値を明らかにするものではないということになります。

繰延資産などの変な項目が入っちゃってるから貸借対照表(B/S)は企業の財産の現在価値を明らかにするものではないということです。

貸借対照表の様式

次に貸借対照表(B/S)の様式についてみていきます。

会計学において貸借対照表の様式には、勘定様式と報告様式の2つがあります。

勘定様式・報告様式の意味は損益計算書と同じようなイメージになります。

つまり、勘定様式とは、資産を左側(借方)、負債・純資産を右側(貸方)に記載する方式です。

一方、報告様式とは、資産・負債・純資産の順に縦に記載する方式です。

企業会計原則では、両方認められています。

これは報告様式によるとされていた損益計算書(P/L)との違いになります。

財務諸表等規則では損益計算書(P/L)の様式は報告様式によるとされています。

これに対して、貸借対照表(B/S)は報告様式、勘定様式のどちらでもいいよということです。

財産法と損益法

では、最後に財産法と損益法というものについてみてみます。

財産法というのは貸借対照表(B/S)による利益の計算の仕方のことです。

財産法による利益=期末資本-期首資本

期末資本・期首資本というのは、期末と期首の貸借対照表の純資産の額のことです。

この差額は純資産の増加分、つまり、元本をつかって稼いだ利益を表すことになります。

貸借対照表(B/S)の純資産の部の繰越利益剰余金には、当期稼いだ利益が含まれています。

したがって、期末の純資産(資本)の金額と期首の純資産(資本)の金額の差額は、当期稼いだ利益になることになります。

これに対し、損益法というのは損益計算書(P/L)による利益の計算の仕方のことになります。

損益法による利益=損益計算書の収益-損益計算書の費用

もちろんこの利益は当期稼いだ利益をあらわしており、さきほどの財産法で計算される利益と同じものになります。

したがって、財産法による利益と損益法による利益は必ず一致するといえます。

どちらも同じ当期稼いだ利益ですから必ず一致することになります。

なお、財産法における利益については、時点計算によって求められた利益であるといわれます。

財産法における利益は、期首時点と期末時点の比較なので時点と時点の比較である時点計算によって求められた利益だといえます。

これに対し、損益法における利益は、期間計算によって求められた利益だといわれます。

損益法における利益は、損益計算書(P/L)における期間損益計算によって求められた利益ですから、期間計算によって求められた利益だといえます。

会計学における財務諸表の1つである貸借対照表(B/S)についてのお話は以上になります。

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Posted by みんなの教養