日本人の自己啓発のモチベーションが低い理由|やる気がないのは内部労働市場のせい?

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日本人労働者のモチベーションは低い?

日本人労働者の仕事に対するやる気であるモチベーションは低いといわれます。

アメリカの調査会社であるギャラップによると、日本の会社で「熱意ある社員」の割合は6%のみであり、その順位は世界で132位にとどまると発表されています。(日本経済新聞2017年5月26日)

また、パーソル総合研究所によると、アジア太平洋14カ国のうち、日本は出世意欲が最低、勤務先以外での学習や自己啓発について、日本は「特に何も行っていない」との回答がすべての国・地域で最も高いとされています。

なぜ日本人は職場外で自己啓発しないのかについて、その理由を考えてみます。

日本人の自己啓発のモチベーションが低い理由

結論として、日本の労働者の自己啓発に対するやる気がないのは内部労働市場が発達しているからだと考えられます。

内部労働市場とは企業内部の配置・移動によって労働力を調達する労働市場のことです。

内部労働市場の反対は、外部労働市場です。

外部労働市場とは、普通の労働市場のことです。

会社内には会社内でしか通用しない特殊な知識やルールがあります。

たとえば、会社の制度や組織、歴史、人間関係に関する特有の知識や暗黙のルールなどが該当します。

このような特殊な知識やルールは内部労働市場を構成しているその会社でしか学ぶことができません。

このように内部労働市場でしか仕事に役立つ知識を学ぶことができない場合、仕事外で勉強するモチベーションは低くなると考えられます。

内部労働市場のメリットデメリット

一方、日本で内部労働市場が発達しているのはそれなりのメリットがあるからだと考えられます。

この内部労働市場のメリットデメリットについて考えてみます。

内部労働市場のメリット

人材の募集・面接・採用という手続きを経ることなく、評価の定まった人材を適所に配置できる

企業の外部から必要な人材を採用する場合、時間的金銭的なコストがかかりますが、企業内部に適した人材がいる場合は、そのようなコストをかけずに人材を配置することができます。

日本的経営における雇用慣行である終身雇用に合致する

終身雇用とは、従業員を定年まで雇用する雇用慣行であり、日本的経営の三種の神器の1つとされています。

終身雇用を採用する場合、採用した従業員を安易にレイオフ(一時解雇)をすることができず、景気後退期には企業内部に余剰人員を抱えることになります。

このような余剰人員をうまく活用するには、内部労働市場を利用して、適切な配置転換(ジョブローテーション)を行う必要があります。

このように終身雇用を維持する日本企業にとっては、余剰となりがちな人的資源を活用できる点で内部労働市場にはメリットがあるといえます。

内部労働市場のデメリット

企業内という狭い範囲から人材を調達するため、最適な人材を得ることが難しい

内部労働市場の中に必要な人材がいればいいですが、人材の数は圧倒的に外部労働市場のほうが多いため、内部労働市場だけからだと最適な人材を得ることが難しいといえます。

労働者が内部労働市場に最適化した行動を取る結果、外部労働市場での競争力に欠けた人材が増えてしまうおそれがある

内部労働市場を通じた配置転換や昇進がメインで、外部労働市場からの人材の流入や流出が少ない場合、従業員は内部労働市場に適した人材になるべく努力をする一方で、外部労働市場で求められる能力を磨く努力の必要性をあまり感じなくなります。

その結果、上の調査結果のように企業外部での自己啓発や勉強に対するモチベーションが低下し、結果的に外部労働市場での競争力に欠ける人材となってしまうおそれが高くなります。

内部労働市場が活発なのは終身雇用のせい

内部労働市場のメリットでもみたように、内部労働市場と終身雇用は密接な関係にあります。

日本企業が終身雇用を維持する限り、内部労働市場中心の人材調達はなくなりませんし、それに最適化した労働者の自己啓発に対するモチベーションの低さも改善されません。

ですが、近年では自動車業界などを中心に主にAIやITへの対応のため外部労働市場から中途で人材を採用する割合が高まっています。

その結果、中長期的には終身雇用は崩れつつあると考えられます。

それに呼応して、外部労働市場での自己の市場価値を高めるため、日本人の自己啓発に対するモチベーションも高くなっていくのではないかと思われます。