シングルタスクに向いている仕事とマルチタスクに適した職業・職種

ビジネスライフ

シングルタスクとマルチタスクの定義

シングルタスクとマルチタスクという言葉があります。ここではシングルタスクが得意な人とマルチタスクが得意な人、それぞれに適した職業や職種について考察します。

シングルタスクとは、タスク(作業とか職務など)を1つ1つコツコツとこなしていくことをいいます。

一方、マルチタスクとは、複数のタスク・仕事を並行してこなしていくことです。

シングルタスクが一点集中型直列処理で仕事をこなし、マルチタスクが同時進行型並列処理で仕事をこなすというイメージです。

シングルタスク的な一点集中型の仕事が得意な人や性格のことをシングルタスク脳といったり、マルチタスク的な同時進行型の仕事が得意な人や性格のことをマルチタスク脳といったりすることもあります。

シングルタスク脳の特徴(長所・短所)

シングルタスク処理

シングルタスク的な処理が得意な人(シングルタスク向きの性格)の長所と短所について考えてみます。

シングルタスク脳の長所

シングルタスク的な処理が得意な人は、1つのことに集中することが得意です。

そのため、1つ1つの仕事について納得のいくまで仕上げることができ、仕事のクオリティが高くなります

シングルタスク脳の短所

一方で、シングルタスク的な処理が得意な人は、同時に複数の仕事をすることを苦手としています。

また、ある作業をしているときに別の作業が割り込んできたような場合、臨機応変な対応が苦手なようです。

さらに、シングルタスク派の人は、性格的にはこだわりが強い傾向にあります。

そのため、1つの仕事を仕上げるのに時間がかかりすぎてしまうことがあります。

加えて、1つのことにこだわる結果、煮詰まりやすいといえ、そういったときに他の仕事を振られたりするとパニックになるおそれもあります。

そういった意味で、マルチタスク派に比べ、ストレスを感じる場面がどうしても多くなりがちで、ストレス耐性が低い傾向にあります。

シングルタスク脳に必要なこと

シングルタスク的な処理が得意な人は、1つ1つの処理を集中してこなしていくことを得意とします。

そのため、自分に降ってきた(与えられた)仕事を与えられた順に時系列でこなしていくと、締め切りに間に合わない仕事がでてくるおそれがあります。

そこで、1つ1つの職務を終えるごとに、処理の優先順位を見直して、優先順位をつけ直すことを間にはさみながら、職務をこなしていくことが求められます。

マルチタスク脳の特徴(長所・短所)

マルチタスク処理

では、マルチタスク的な処理が得意な人(マルチタスク向きの性格)の長所・短所にはどのような点があるでしょうか。

マルチタスク脳の長所

マルチタスク的な処理が得意な人は、複数の仕事を同時にこなしていくのに長けています。

そのため、急に仕事を振られても、シングルタスク派よりは臨機応変に対応できます

また、同時に仕事をこなしていくことで、適度に息抜きができるため、ストレス耐性が高くなりやすく、レジリエンス(精神的な回復力・耐久力)に優れる傾向にあります。

マルチタスク脳の短所

一方で、マルチタスク的な処理が得意な人は、性格的には移り気な人が多いようです。

そのため、マルチタスク派の人は、1つ1つの仕事を最後まで仕上げる前に、その人の興味自体が別のことに移ってしまうことが、シングルタスク派に比べると多くなります。

その結果、1つ1つの仕事の完成度がシングルタスク派に比べ、低くなってしまうおそれがあります。

マルチタスク脳に必要なこと

1つ1つの仕事の完成度が低くなってしまうことを避けるためには、仕事を細分化して考えるようにします。

細分化されたそれぞれの項目を別の仕事としてとらえ、それらを同時並行で処理していくことで、マルチタスク的に処理していきます。

たとえば、ある仕事を分野や段階、PDCA(PDS)のサイクルごとに細分化し、それらを同時並行的に処理するようにします。

PDCA(PDS)などは本来、時系列にそって行うものですが、とりあえず手を付けて(Do)、計画(Plan)や評価・改善(Check・Action(See))などもなるべく並行して取り組んだ方が、マルチタスク派にはよくなじみます。

このように仕事を細分化して考えることで、それぞれの項目でそこそこのクオリティでも、チェック項目が増える結果、全体の仕事のクオリティを高めることができます

また、マルチタスク派の人は、複数の仕事を同時にこなしていけるため、全体の計画を立てなくても、なんとなく仕事をこなせてしまいがちです。

さきほどのPDCA(PDS)の話でいうと、複数のDoだけしていて、計画(Plan)や振り返りである評価・改善(Check・Action(See))が欠けているという感じです。

ですが、それでは全体の方向性を誤るおそれがありますし、計画を立てていないため、計画のフィードバックもなされず、得られる学びが乏しくなる可能性もあります。

そこで、さきほどと同様、手を動かしてDoをしながら、同時に計画(Plan)や評価・改善(Check・Action(See))もこなしていくことで、より効果的に仕事を進めていくことができるようになります。

シングルタスク派に向いている仕事・職種とマルチタスク派に向いている仕事・職種

PC、カレンダー、新聞などタスクを意味する画像

世の中の仕事はさまざまな職種・職業がありますが、その中でシングルタスク的な性格に向いている仕事・職種、マルチタスク的な性格に向いている仕事・職種にはどのようなものがあるでしょうか。

シングルタスク的な性格に向いている仕事・職種

マルチタスクが苦手なシングルタスク派の適職、つまりマルチタスクがない仕事というのはどんな仕事でしょうか。

シングルタスク派は一点集中型であり、1つ1つ仕事をこなしていくことが得意なため、他から横ヤリが入りにくい職人的な仕事が適職だといえます。

また、締切や成果に向けて1つのことに取り組んでいくことは得意ですから、成果に比例して評価される歩合制の営業職、配送業、紹介業、研究職、作家、タクシーやトラック、ライドシェアの運転手などが向いているといえます。

また、ほかに請負形態で仕事量を自分でコントロールできるプログラマーWebデザイナーやイラストレーター、ライターや個人ブログの運営者、アフィリエイター、YouTuber、農家、漁師、猟師なども成果に応じて報酬が得られますし、自分のペースで仕事を進められるためシングルタスク派に向いているといえます。

一方で、成果で測られる成果給とは真逆ですが、拘束される時間によって評価される時間給が徹底されている仕事も、余計な横ヤリが入りにくく、シングルタスク派に向いているといえます。

時間給が徹底されている仕事としては、工場のライン工や警備員、単純作業のアルバイトやパートなどになります。

勤務形態で考えてみるとシングルタスクの仕事は正社員よりもバイトやパートのほうが多いと思われます。

あと、医師も、あまりいいこととはいえませんが、病気や症状だけをみていれば許されるというシングルタスク的な側面が強く残っているため、向いているといえると思われます。

加えて、司法書士も士業の中では、案件ベースの仕事の進め方になりますし、仕事内容も比較的定型的ですので、資格職の中ではシングルタスク派に向いているといえます。

ほかに、小中高の先生は子どもや保護者の都合で振り回されることも多いため、向いているとはいいにくいですが、塾の講師や大学教員や日本語教師であればシングルタスク的な部分がマルチタスク的な部分に勝る場合が多く向いているといえます。

なお、マルチタスクが苦手なシングルタスク脳な人は、ストレスに弱い面もありますが、取り組む対象が複数でなければ、相手の大きさは問題にならない面もあります。

そのため、世界全体のマーケットを相手にするようなトレーダーなども意外と向いており適職だといえます。

シングルタスク的な性格に向いている(マルチタスクがない)仕事・職種まとめ

職人、研究職、作家、プログラマー、Webデザイナー、イラストレーター、ライター、個人ブログの運営者、アフィリエイター、YouTuber、農家、漁師、猟師、工場のライン工、警備員、単純作業のアルバイト・パート、医師、司法書士、塾講師、大学教員、日本語教師、トレーダーなど

シングルタスクの仕事(女性編)

シングルタスク・マルチタスクの向き・不向きは男性・女性問いませんが、仕事の中には女性向きの仕事も存在しています。女性向きの仕事の中で一点集中型のシングルタスク的な仕事を考えてみます。

多くの女性向きの仕事はマルチタスク的な性格に向いています。周りによく気づく、周囲に配慮できるといった女性的な特徴はマルチタスク的な性格だからです。

ですから、保育士、看護師、CA(キャビンアテンダント)、秘書など従来女性が多く活躍していた(現在も割合的には女性が多い)仕事はマルチタスク的な業務が多くなっています。

そのため、シングルタスク的な性格の女性は、女性向きの仕事ではなく、さきほど挙げたマルチタスクが相対的に少ないWebデザイナーやイラストレーター、ブロガー、YouTuber、医師、司法書士、塾講師など女性も相対的に多く活躍しているシングルタスク的な仕事に就くことをおすすめします。

マルチタスク的な性格に向いている仕事・職種

では、マルチタスクが得意なマルチタスク派に適した職業(適職)は何でしょうか。

マルチタスク派は複数の仕事を同時に進めていけるため、調整業務や取りまとめ、折衝業務などを行うコーディネーターやプロデューサー的な仕事に向いているといえます。

ですから、さきに挙げた保育士、看護師、CA(キャビンアテンダント)、秘書などは周りへの配慮や調整が求められる仕事でありマルチタスク的だといえます。

また、チームで行う仕事のほとんどは、調整業務が入ってきますので、チームで仕事を行うような一般的なサラリーマン、IT分野のプロジェクトマネージャー、多くの行政職の公務員、小学校・中学校・高校の教師、監査法人勤務の公認会計士などがマルチタスク派に向いているといえます。

会計士が出ましたが、ほかの資格を生かした職業である士業についてはどうでしょうか。

弁護士や公認会計士、税理士、行政書士などの多くの士業は独立してしまえば、自分で仕事量をコントロールできるので、シングルタスク派に向くともいえますが、複数のクライアントごとに訴訟や往査、面談、申告・提出の期限など複数の締切を抱えて仕事を進めていく点ではマルチタスク的な側面が強いです。

さらに、士業の仕事のほとんどはキッチリとした堅い仕事です。

士業の仕事は一般の人には難しい仕事であるため、それを代わりにやることに付加価値が生じ、お金になります。

ですが、そういった難しい仕事をすべてキッチリカッチリやるというのは、それこそ、とても難しいことです。

そのため、手を抜けるところは手を抜く必要があるわけですが、1つ1つの仕事の成果にこだわるシングルタスク派はそれが苦手です。

仕事内容が固くなればなるほど、うまく手を抜けるマルチタスク派が適していると思われます。

以上から、資格を生かした職業については、資格の取得そのものは、合格に向けてがんばりさえすればいいので、シングルタスク派の方が向いていると思われますが、実際の業務はマルチタスク的な内容ですので、シングルタスク派の人は注意が必要です。

マルチタスク的な性格に向いている仕事・職種まとめ

コーディネーター、プロデューサー、一般的なサラリーマン、IT分野のプロジェクトマネージャー、行政職の公務員、小学校・中学校・高校の教師、保育士、看護師、CA(キャビンアテンダント)、秘書、弁護士・公認会計士・税理士・行政書士などの多くの士業など

まとめ(シングルタスク的な性格のあなたへ)

シングルタスクを意味するハートの画像

シングルタスク派とマルチタスク派で生きにくさを感じるのは、一点集中型のシングルタスク派の方が多いです。

人間は社会的な動物であり、人とのつながりはどうしても切れません。

ですが、人とのつながりは必ずイレギュラーな事態を引き起こします。

このイレギュラーな事態のせいで、不測の事態に弱いシングルタスク派はストレスを感じてしまいます。

また、全員ではありませんが、シングルタスク派の中にはコミュニケーション能力に自信がない人が一定数います。

このようなコミュニケーション能力に欠けるいわゆる「コミュ障」なシングルタスク派は、自覚がある場合、公務員や資格取得を目指すことが多いようです。

ですが、さきほどみたように、公務員や資格職の多くは、チームでの仕事だとか、複数の案件を同時に抱えるというようにマルチタスク的な側面をもっているため、必ずしも一点集中型にとって適職とは限りません。

また、資格職はそれほどでもありませんが、公務員は試験に加えて、就職活動を勝ち残る必要があります。

そのため、コミュニケーション能力に欠けるシングルタスク派は面接試験で弾かれてしまうおそれが高くなります。

以上から、安易に公務員や資格を目指すのではなく、よく考えるのが望ましいです。

最後に

シングルタスクとマルチタスクの統合をあらわす画像

仕事でも人間でも、シングルタスク、マルチタスクというのは程度の問題です。

シングルタスクがまったくない仕事もなければ、マルチタスクがまったくない仕事もありません。

また、人間の側でいっても、完全なシングルタスク脳も存在しないし、完全なマルチタスク脳も存在しません。

たとえば、一口にシングルタスク派といっても、横ヤリが苦手な人、裁量がないと嫌な人、複数の仕事の処理が苦手な人、調整業務が嫌な人などさまざまです。

ですから、本当に自分にあった仕事を見つけるため、まずは自分のシングルタスクな部分とマルチタスクな部分をよく見極めるようにします。

その上で、就きたい仕事のシングルタスク的な部分、マルチタスク的な部分を考えて、特に自分と合わずにミスマッチが生じるであろうところについて、自分が耐えられるかどうかを事前に考えるようにします。

すでにその仕事についている場合、どうしても合わなければ、転職も手ですが、仕事の進め方をかえるだけで済む場合も多いですので、まずは仕事の進め方の見直しを検討してみましょう。

SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる