企業・産業研究

企業の社会的責任CSRとESG投資|ESG投資は儲からない?

企業の社会的責任

企業の社会的責任について

社会的責任とは、文字通り企業の社会に対する責任のことであり、英語ではCSR(Corporate Social Responsibility)といいます。

この社会的責任について、かなり早い段階から指摘していたのが「経済学の父」アダム・スミスです。

アダム・スミスは、自由競争(レッセフェール)を主張し、市場メカニズムに任せれば、最適な状態が実現できると主張します。

アダム・スミスの考え方を経済学では古典派といいます。

アダム・スミスはこのように自由競争を主張していますが、なにもかも好き勝手にしてもよいといっているわけではないんですね。

アダム・スミスは、自由競争の前提として、正義と相互共感による利己心の自己抑制が必要であると主張します。

正義の心と相互共感(=シンパシー)によって、利己心(=儲けたいと思う気持ち)のセルフ・コントロールが必要だということですね。

短期的に儲かるからといって詐欺的な商売などをしていても神の見えざる手は働かないよということです。

これが社会的責任論のはじまりとされています。

企業の社会的責任のあらわれ

企業の社会的責任のイメージ

この企業の社会的責任のあらわれといえるのがフィランソロピーとメセナになります。

フィランソロピー:企業の慈善活動

フィランソロピーというのは、企業の慈善活動のことです。

たとえば、医療や教育施設への寄付などがフィランソロピーになります。

フィランソロピーの具体例1:1%クラブ

このフィランソロピーの例としては、1%(ワンパーセント)クラブがあります。

企業の決算書である損益計算書の中の利益の1つに経常利益があります。

この経常利益の1%を寄付しようという運動が1%クラブになります。

1%クラブは1990年に経団連によって設立され現在でも活動しています。

なお、流通大手のイオンは独自にイオン1%クラブという形で活動しているようです。

こちらは経常利益ではなく税引前当期純利益の1%みたいです。

イオングループの主要企業が税引前利益の1%相当額を拠出し、「次代を担う青少年の健全な育成」、「諸外国との友好親善の促進」、「地域社会の持続的発展」を3つの柱となる事業として活動しています。

引用:イオン1%クラブ

また、フィランソロピーとは直接関係ありませんが、経団連は「企業行動憲章」というものを定めて、企業に社会的責任を果たすよう求めています。

企業行動憲章とは、企業は公正な競争を通じて利潤を追求すると同時に、社会的課題の解決を図るなど社会にとって有用であることを求めるものであって、企業の社会的責任論のあらわれであるとされています。

フィランソロピーの具体例2:ドナルド・マクドナルド・ハウス

ドナルド・マクドナルド・ハウスとは、病気の子どもとその家族が滞在するために利用できる施設です。

運営はファーストフード大手のマクドナルドとは別組織の「公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン」により行われています。

ですから、マクドナルドにとっては、ドナルド・マクドナルド・ハウスへの寄付は、医療関連施設への寄付としてのフィランソロピー活動にあたります。

メセナ:文化・芸術への支援活動

これに対し、メセナ活動とは、文化や芸術に対する企業の支援活動のことです。

たとえば、文化ホールを建てたり、美術館を建設したりすることがメセナ活動の例になります。

ちなみに、ローマ時代の文化や芸術の支援に熱心だった政治家さんの名前が「メセナ」さんだったので、メセナ活動というらしいです。

ちなみに、沖縄にはメセナ予備校という予備校がありますが、これは文化・芸術への支援を意味するメセナにあやかったのかなと思われます。

メセナの具体例:サントリー美術館

東京赤坂にサントリー美術館という美術館があります。

ご存知のようにサントリーはお酒を作って販売するメーカーですので、美術館の運営は本業ではなく、メセナ活動としてやっているものになります。

余談ですが、サントリーがこのような美術館の運営などを積極的に行えていたのは、サントリーが大きい会社ながらながらく非上場の同族企業だった影響が大きいと考えられます。

上場企業はどうしても株主の方を向いた経営を行いがちになり、メセナ活動などの直接的な利益を生まない活動はやりにくくなります。

その点、サントリーはながらく非上場の同族会社だったため、このような活動が行いやすかったと考えられます。

会計と企業の社会的責任

社会的責任のイメージ

会計の手法を使って、企業の社会への貢献度合いなどを数値によって客観的に表現しようという試みがなされています。

そのあらわれが社会関連会計と環境会計です。

社会関連会計とは、企業の社会的責任の達成度合いを会計的な数値により公表するものです。

これに対し、環境会計とは、企業活動の環境への負荷や企業の環境に対する保全措置の効果を会計的な数値により公表するものになります。

投資と企業の社会的責任

ESG投資のイメージ

社会的責任への関与に積極的な企業に投資する動きが活発になっています。

従来このような投資は、SRI(Socially Responsible Investment、社会的責任投資)といわれてきましたが、最近はESG投資とよばれることが多いです。

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)のことです。

このESGの視点に基づいて企業を評価し、ESGの観点から優れた企業に投資することをESG投資といいます。

SRIやESG投資は、企業の社会的責任への意識を高め、経済全体の厚生を増進するという点では望ましいといえますが、純粋な投資としてESG投資ははたしてS&P500指数や日経平均株価などのインデックスに勝てるのかというと疑わしいところがあります。

ESGの程度とパフォーマンスの間には(あちらを立てればこちらが立たずという)トレード・オフの関係があるとされます。

これはESG投資のパフォーマンスは株価指数であるインデックスを下回るということです。

ただ、一方で管理職に占める女性の比率が高い企業の株価は、東証株価指数(TOPIX)よりも高い成績を示すというデータもあります。

ESG投資は儲かるのかどうか、どのように考えればいいのでしょうか。

まず、ESGとパフォーマンスのトレード・オフが生じる理由は、ESG投資の対象となるESGに優れた企業は、成熟し安定している企業であることが多いと考えられるため、荒削りな状態から大きく成長していくベンチャーやスタートアップ企業の株価の上昇をインデックスほどには取り込めていないためだと推測されます。

一方、女性管理職の割合と株価の正の相関が生じる理由は、ESGというよりもダイバーシティ(多様性)の話だと思われます。

つまり、男性だけから管理職を登用する企業よりも、男性と女性を合わせた大きな池(人材のプール)から管理職を登用する企業の方が優秀な管理者が多くなり、業績が良くなる結果、株価にも正の相関をもたらすのではないでしょうか。(もちろん女性のモチベーションや組織の風通しも後者の方が高くなることも株価に影響するはずです。)

そうすると、純粋なESG投資というのは、儲けるために行うというよりは、それこそ「社会的責任」のために行うものという程度に考えておくべきかもしれません。