財政学

公平な税金の種類は?日本の所得税は垂直的公平に消費税は水平的公平に役立つ

公平な税金

税金の公平性とは何か?

よく「税金の負担は公平でなければならない」とか「消費税は金持ち優遇で不公平だ」とききます。

では、この税金における公平性とは何でしょうか?

財政学では、税の公平性というのは、租税原則の1つだとされます。

租税原則というのは、税金は公平、中立、簡素でなければならないというわが国(日本)における税金に関する一般的な原則をいいます。

日本の租税原則:租税は公平、中立、簡素でなければならない

アメリカならここに成長という要素が入るんですが、日本では取り入れられていません。

この租税原則のうちの1つである公平性というものについてわかりやすく説明します。

2つの公平性の意味

公平性には、垂直的公平水平的公平という2つの考え方があります。

垂直的公平というのは、払える人が多く払うべきだという考え方です。

税金を負担する能力のことを担税力といいます。

この担税力というのは要するに所得のことです。

この所得が大きい人はより多くの税金を支払い、担税力(所得)が小さい人はより少ない税金を支払うべきであるということを垂直的公平といいます。

ですから、たとえば、お金持ちと庶民ではお金持ちがたくさん税金を支払うのが公平だというのが垂直的公平になります。

これに対して、水平的公平というのは、同じ収入の人なら同じだけ、税金を払うべきだという考え方です。

水平的公平の考え方によれば、担税力(所得)が同じ人々は、同じ額の税金を支払うべきであるということになります。

たとえば、所得が1000万円のサラリーマンと所得が1000万円の農家は同じ額の税金を支払うのが公平だというのが水平的公平になります。

なお、租税原則のあと2つ中立簡素についてもみておきましょう。

中立性とは、租税はなるべく効率的な資源配分を阻害しないようにするべきであるということです。

税金をかけたせいで、国民の経済活動を阻害してはいけないということを意味します。

ちなみに、経済学でいう効率性と同じ概念が中立性になります。

次に、簡素とは、なるべく徴収コストの少ない、簡潔な制度であるべきであるということです。

税金を集めるためにお金や手間がかかってはいけないということを指します。

税金を集めるのにコストがかかっては、本末転倒だからです。

公平性にこれらの中立性と簡素を加えたものが、日本の租税原則になります。

公平性に役立つ税金の種類は何か?

では、公平性について理解した上で、公平な税金って何でしょうか。

ここでは、直接税間接税という2種類の税金で考えてみます。

直接税と間接税というのは税金の分類の仕方の1つです。

この直接税と間接税という分類は、納税者との関係による分類になります。

ここでいう直接・間接というのは、どういうことかというと、税金を「直接」納めるか、「間接」的に納めるかという違いになります。

直接納めるのが直接税、間接的に納めるのが間接税になります。

直接税:税金を直接納める

間接税:税金を間接的に納める

この分類を別の言葉でいえば、税金を払う人と納める人が同じかどうかという意味になります。

税金を払う人と納める人が同じ税金が直接税です。

たとえば、所得税はサラリーマンや公務員は源泉徴収によって給料天引きで引かれてしまうため、サラリーマンが自分で所得税を収めているわけではありませんが、所得税は確定申告によって自分で申告するのが原則です。

そのため、この原則によれば、所得税は払う人と納める人が同じ税金になるので、所得税は直接税だといえます。

これに対し、税金を払う人と納める人が違う税金が間接税になります。

たとえば、消費税は私たちはお店で買い物をするたびに消費税を払っています。

ですが、払った税金を私たち消費者が税務署に納めているわけではありませんね。

納めているのはお店の人になります。

ですから、消費税は税金を払う人(負担する人)と納める人(納税する人)が違う税金になります。

よって、消費税は間接税になります。

ちなみに、この分類について難しい言葉で表現すると、租税負担の転嫁の有無による分類ということになります。

租税の負担を転嫁せずに、自分で納める税金が直接税で、租税の負担が転嫁されて、税の負担者とは別の人が納める税金が間接税になります。

では、この直接税と間接税についてそれぞれの特徴をみてみます。

直接税とは何か?代表は所得税、法人税

まずは、直接税についてですが、直接税を難しい言葉で表現すると、

直接税 : 法律上の納税義務者(納税者)と実際の租税負担者(担税者)が一致する税

ということになります。

この直接税の例は、さきほどみた所得税のほかに、法人税などがあります。

法人税も税金を納める企業と実際に負担する企業は同じ1つの企業(法人)ですから、直接税になります。

直接税の長所

この直接税の長所と短所について考えてみます。

直接税の長所1:垂直的公平に優れている

まず、直接税の長所の1つ目は、垂直的公平に優れているという点です。

特に、累進課税は垂直的公平に優れているとされます。

垂直的公平というのは、所得が大きい人ほど多くの税金を支払うべきだという考え方でした。

直接税、中でも所得税の累進課税のように、累進課税方式の直接税は、所得が大きくなるほど税率が高くなるので垂直的公平に優れているといえます。

ですから、直接税は垂直的公平の観点からは公平な税金だといえます。

直接税の長所2:ビルトイン・スタビライザーの効果が大きい

また、直接税の2つ目の長所ですが、直接税は、ビルトイン・スタビライザー(景気の自動安定化機能)の効果が大きいとされます。

ビルトイン・スタビライザーというのは、財政の機能の1つである経済安定化機能の例の1つです。

財政の機能
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このビルトイン・スタビライザーの具体的な例が所得税の累進課税制度です。

直接税である所得税の累進課税がビルトイン・スタビライザーの例になるということは、直接税はビルトイン・スタビライザーの効果が大きいといえることになります。

直接税の短所

次に、直接税の短所についてですが、これは長所の逆だと考えておけばいいです。

直接税の短所1:水平的公平の確保が難しい

まず、直接税は水平的公平の確保が難しいとされます。

水平的公平というのは、所得が同じ人は同じだけ税金を支払うべきだという考え方でした。

たとえば、サラリーマンと農家で所得が同じだった場合、サラリーマンだと税金は必ず給料から天引きで引かれます。

これに対し、農家は自分で申告するので、脱税などが起こりやすいといえます。

そのため、水平的公平が実現できないという問題があります。

直接税の短所2:税収が不安定になる

直接税の2つ目の短所は、景気の影響を受けやすく、間接税に比べて税収が不安定になる点があります。

これはさきほどみた長所の2つ目の裏返しです。

ビルトインスタビライザーの効果が大きいということは、裏を返せば景気の影響を受けやすいということになります。

以上が、直接税になります。

間接税とは何か?代表は消費税

次に、間接税についてです。

間接税は税金を払う人と納める人が違う税金です。

間接税:法律上の納税義務者(納税者)と実際の租税負担者(担税者)が異なる税金

になります。

たとえば、消費税、酒税、たばこ税、いわゆるガソリン税である揮発油税などが間接税の例になります。

税金を払う人と納める人が違うということは、消費税を納める納税者は、事業者であるお店や会社だけれど、税金を負担する担税者は消費者だということになります。

間接税の長所

この間接税の長所・短所は、直接税の長所・短所の逆になります。

間接税の長所1:水平的公平に優れている

間接税は、水平的公平に優れているとされます。

間接税は、消費の大きさに応じて課税されます。

たとえば、間接税の1つである消費税は消費に応じて税金が大きくなります。

また、同じく間接税である酒税やタバコ税もお酒やタバコの消費に応じて課税されます。

これらの税金は、同じ消費の人には、同じだけ税金をかけられることになります。

そのため、水平的公平に優れているといえます。

これが間接税の1つ目の長所になります。

この点で、消費税などの間接税水平的公平の観点からみて公平な税金だといえます。

間接税の長所2:税収が安定している

間接税のもう1つの長所は、景気の影響を受けにくく、直接税に比べて税収が安定している点があります。

これは消費の方が直接税のもとになっている所得に比べて変動が小さいので、直接税に比べて税収が安定していることを意味します。

経済学で勉強しますが、所得は使ってしまう消費と使わずにとっておく貯蓄にわけられます。

このように消費は金額的に所得の一部分なので、所得と消費では、消費の方が変動の幅が小さいといえます。

そのため、消費に課税する間接税の方が税収が安定しているといえます。

間接税の短所

次に間接税の短所についてです。

間接税の短所1:垂直的公平の確保が難しい

間接税の1つ目の短所は、垂直的公平の確保が難しい点です。

これは、たとえば消費税の場合、誰に対しても一律8%の消費税がかかります。

このように所得が高い人も低い人も税率が一定になるのが消費税です。

これは間接税の場合は、所得が高い人ほど税金の負担が軽くなるということを意味しています。

たとえば、トイレットペーパーの場合、お金持ちと庶民であまり使う量に違いはありません。

お金持ちだからといって、トイレットペーパーをたくさん使ってお尻をふくなんてことはありませんね。

とすると、消費税の負担は、お金持ちの方が軽いことになります。

そのため、間接税は垂直的公平の確保が難しいといえます。

間接税の短所2:ビルトイン・スタビライザーの効果が小さい

また、短所の2つ目ですが、これは長所の2つ目にあったように、間接税は景気の影響を受けにくいので、ビルトイン・スタビライザー(景気の自動安定化機能)の効果が小さいといえます。

以上が間接税についてです。

直間比率の意味

この直接税と間接税の比率が直間比率になります。

直間比率(租税収入に占める直接税と間接税の比率)

日本の直間比率は、国と地方の両方の税金の合計でいうと、直接税と間接税で7:3という割合になります。

ほかの国と比べてみると、わが国の直接税の割合をあらわす直間比率は、アメリカより低くイギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国よりは高くなっています。

(まとめ)公平な税金とは何か?

以上から「金持ち優遇で不公平だ」とされる消費税は、垂直的公平の点からはたしかに不公平な税金だといえます。

特に消費税は、逆進税ともいわれ、所得が高くなるほど税金の負担が軽くなるという逆進的な性質があるとされます。

一方で、水平的公平の点からは、消費税のような間接税は公平な税金だといえます。

一方、累進課税で課税される所得税は、垂直的公平の点からは、公平な税金です。

ですが、所得税だけでは水平的公平に欠けることになります。

ですから、垂直的公平と水平的公平の両方を達成するためには、所得税と消費税といった直接税と間接税のバランスが大切だということになります。