会社の種類 株式会社以外の3つ会社 合名会社・合資会社・合同会社+有限会社、相互会社
会社の種類
会社というのは、人の集まりのことですが、このような人の集まりのことを、民法などの法律の世界では「法人」といいます。
中でも、会社は利益を得ることを目的とする法人なので、営利法人といいます。
会社:営利法人
この会社について規定している法律が会社法です。
会社:営利法人(←会社法で規定)
このような会社法における営利法人である会社には4つの種類があります。
会社(会社法における営利法人):株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4つ
昔の会社:有限会社
なお、以前は、有限会社法という別の法律で、有限会社という会社も認められていました。
しかし、有限会社法は会社法が施行された平成18年に廃止され、もう新しく有限会社を作ることはできなくなっています。
街を歩いていると、会社の看板をよく見かけます。
たとえば、「株式会社◯◯」とか、「△◯株式会社」とか、「(株)○△」とかです。
これらはすべて株式会社ですが、その中に「(有)」からはじまるような会社があります。
有限会社というのは、この「(有)」からはじまる会社などのことです。
ですが、さきほどみたように有限会社というのは、もう新しくつくることはできなくなっているので、いま街で見かけるのは、有限会社法が廃止された平成18年以前に設立された有限会社になります。
こういった平成18年以前に設立された有限会社は特例有限会社として、いま現在も合法的に活動が認められています。
会社法における4つの会社の定義
さきほどみたように会社法では株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4つの会社が認められています。
これらの会社というのは、何が違うのでしょうか。基本的には社員の責任が違います。
社員というのは、会社の出資者のことです。
従業員のことではないので注意します。
普通、トヨタの社員とか、任天堂の社員といえば、それはトヨタや任天堂の従業員のことを指しますが、会社法や経営学の世界では、社員といえば出資者のことをいいます。
社員は出資者なので、お金などを出しているので、金を出せば、口も出せるし、手も動かせるはずだということで、社員には原則として業務執行権が認められています。
業務執行権というのは、会社の仕事を実際にとり行っていくことができるということです。
この業務執行権は、社員の権利ですが、大事なのは責任です。
社員の責任には、無限責任と有限責任の2つがあります。
無限責任:会社が倒産したときなどに、会社債権者に対して、個人財産まで含めて負債総額の全額の責任を負うこと
もし会社が倒産した場合、当然、それぞれの出資者の払ったお金は返ってきません。
儲けようと思って出資したのだから、出資した会社の事業が行き詰まった場合、出資したお金が返ってこないのは、あたり前だといえます。
ただ、会社が倒産する場合、会社の借金が残ることが多いです。
このときに会社の債権者から、出資者個人の財産を処分してでも借金を返せと追及されてしまう、これが無限責任という言葉の意味になります。
有限責任:会社が倒産したときなどに、会社債権者に対して、出資額を限度とする責任を負うこと
もし会社が倒産した場合、こちらも無限責任と同じように出資者の払ったお金は返ってきません。
これは無限責任と同じですが、それ以上は会社の債権者から会社の借金を返せといわれることはない、これが有限責任という言葉の意味になります。
この無限責任、有限責任という社員の責任の違いに注目して、それぞれの会社の定義をみていきます。
会社法上の会社1:合名会社
まず、合名会社というのは、社員全員が無限責任社員でなければいけない会社です。
合名会社:無限責任社員のみからなる会社
会社法上の会社2:合資会社
次に、合資会社というのは、無限責任社員と有限責任社員の両方がいなければいけない会社になります。
合資会社:無限責任社員と有限責任社員からなる会社
ちょっとゴロ合わせのようになりますが、合資の「資」を出資の「資」と考えて、2つの出資形態、2つの責任形態が合わさって、「合資」というと考えておきます。
なお、この合資会社の有限責任社員には、昔は業務執行権はありませんでした。
合資会社は事実上、酒蔵などの酒造メーカーなどでよくとられていた会社形態でした。
酒造メーカーでは、酒造りにたずさわる職人さんなどが無限責任社員となり、酒造りの設備にお金を出す金主さんが有限責任社員となるという役割分担がとられていました。
そのような役割分担では、有限責任社員には業務執行権がないほうが都合がよかったので、以前は合資会社の有限責任社員には業務執行権がありませんでした。
ですが、合資会社は何もこのような役割分担のある酒造メーカー専用の会社ではありませんし、有限責任社員に業務執行権を認めたほうが、その有限責任社員の保護につながるため、現在では、合資会社の有限責任社員にも業務執行権は認められています。
ですから、合資会社の有限責任社員には、昔は業務執行権はなかったけれど、いまはあるということで、合資会社の場合は、無限責任社員でも、有限責任社員でも、原則どおり社員には業務執行権が認められると考えておきます。
会社法上の会社3:合同会社
3つ目の、合同会社は、会社法の制定で新しくできた会社です。
アメリカの制度を参考につくられたので、英語での呼び方もあります。
合同会社は、英語では、Limited Liability Companyといわれ、頭文字からLLCとよばれます。
Limitが限定するなので、「限定された」、Liability「責任」の、Company「会社」ということで「責任が限定されている会社」、つまり、有限責任社員のみからなる会社が合同会社になります。
実はこの有限責任を負う社員だけからなるというのは、次の株式会社も同じです。
株式会社と合同会社の違いは、合同会社は、株式会社のミニ版(簡易版、小さい版)という位置づけになります。
この株式会社のミニ版(簡易版、小さい版)というのは以前は有限会社がそのポジションにありました。
ですが、さきほどみたように、有限会社はもういまはつくることができなくなっているので、その空いたポジションに入ったのが、合同会社なんだということになります。
ちなみに、合同会社の例は、シリアルのケロッグの日本法人は、「日本ケロッグ合同会社」です。
また、清涼飲料水のモンスターエナジーの日本法人は、「モンスターエナジージャパン合同会社」になります。
これらの会社は必ずしも小さい会社ではありませんが、合同会社は株式会社のミニ版として、株式会社よりも規制がゆるい面があるので、これらの外資系企業の日本法人の会社形態として選択されているようですが、企業統治(コーポレート・ガバナンス)の面からして、あまり望ましいこととはいえないと思われます。
会社法上の会社4:株式会社
これら合名会社、合資会社、合同会社の3つのほか株式会社が会社法上、認められています。
株式会社:社員の地位が株式という形をとり、(間接)有限責任社員のみからなる会社
会社法以外の会社:相互会社
合名会社、合資会社、合同会社に株式会社を加えた4つの会社は、会社法で認められている会社です。
一方、別の法律で認められている会社形態として相互会社があります。
相互会社とは、保険業法により保険会社にだけ認められた会社形態です。
それぞれの会社の根拠となる法律
相互会社
… 保険業法に規定
合名会社、合資会社、合同会社、株式会社
… 会社法に規定
相互会社では保険加入者が出資者としての社員となり、保険料を限度とする有限責任を負います。
有限責任を負うのは、合同会社や株式会社と同じですね。
この相互会社の最高意思決定機関は社員総会(もしくは社員総代会)であるとされます。
株式会社でいう株主総会にあたるのが、社員総会になります。
ちなみに、社員総会と社員総代会の違いですが、社員全員が参加するのが社員総会であり、社員の代表が参加するのが社員総代会になります。
また、相互会社の各社員は保険料の大小にかかわらず、1人1議決権を持ちます。
これが1株1議決権が与えられる株式会社と違うところになります。
なお、相互会社は保険業法により保険会社にだけ認められた会社形態ですが、保険会社はすべて相互会社でなければならないわけではありません。
たとえば、もともと相互会社だった日本生命は途中で株式会社に転換しています。
このように株式会社形態をとる保険会社も認められています。