アメリカ大統領選挙の株価への影響|米国大統領選挙のアノマリー
アメリカ大統領選挙の株価への影響
アメリカの大統領選挙は4年に一度、オリンピックイヤーと同じ年に実施されます。
非常に大きな政治イベントであるアメリカ大統領選挙が株価に与える影響について分析してみます。
歴代のアメリカ大統領と大統領選挙の年
まず、1900年からの歴代のアメリカ大統領と政党、大統領選挙のあった年をみてみます。
年 | 政権 | 政党 |
1900年 | マッキンリー | 共和党 |
1904年 | ルーズベルト | 共和党 |
1908年 | タフト | 共和党 |
1912年 | ウィルソン | 民主党 |
1916年 | ウィルソン | 民主党 |
1920年 | ハーディング | 共和党 |
1924年 | クーリッジ | 共和党 |
1928年 | フーバー | 共和党 |
1932年 | F・ルーズベルト | 民主党 |
1936年 | F・ルーズベルト | 民主党 |
1940年 | F・ルーズベルト | 民主党 |
1944年 | F・ルーズベルト | 民主党 |
1948年 | トルーマン | 民主党 |
1952年 | アイゼンハワー | 共和党 |
1956年 | アイゼンハワー | 共和党 |
1960年 | ケネディ | 民主党 |
1964年 | ジョンソン | 民主党 |
1968年 | ニクソン | 共和党 |
1972年 | ニクソン | 共和党 |
1976年 | カーター | 民主党 |
1980年 | レーガン | 共和党 |
1984年 | レーガン | 共和党 |
1988年 | ブッシュ(親) | 共和党 |
1992年 | クリントン | 民主党 |
1996年 | クリントン | 民主党 |
2000年 | ブッシュ(子) | 共和党 |
2004年 | ブッシュ(子) | 共和党 |
2008年 | オバマ | 民主党 |
2012年 | オバマ | 民主党 |
2016年 | トランプ | 共和党 |
1900年からだと合計で30回あった大統領選挙において、共和党の候補が勝ったのが16回、民主党の候補が勝ったのが14回でした。
アメリカでは2大政党制がきちんと機能しているのがわかりますね。
米国大統領選挙のアノマリー
では、以上をもとに、大統領選挙のアノマリーについて考えてみます。
アノマリーというのは、合理的には説明しにくい株価の値動きのことです。
大統領就任○年目の株価への影響(アノマリー)
大統領選挙は国民が投票する一般選挙は11月に実施されるため、実際の政権の発足は翌年からになります。
この大統領選挙の翌年を政権の1年目として政権1年目から4年目にわたる株価の値動きの特徴を分析します。
ここでは株価のデータとして米国を代表する株価指数であるS&P500を使用します。
検証期間は1950年1月(民主党のトルーマン政権の2年目)から2018年9月(共和党のトランプ政権の2年目の途中)までの約68年間です。
それぞれの年の年初で仕掛け、年末に手仕舞いをするとした場合の成績は以下のようになりました。
任期 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 |
総損益 | 117% | 121% | 268% | 115% |
総取引数 | 17 | 18 | 17 | 17 |
平均損益 | 6.9% | 6.7% | 15.8% | 6.8% |
勝率 | 59% | 67% | 88% | 82% |
プロフィットファクター | 2.4 | 2.4 | 369.2 | 3.2 |
最大ドローダウン | -50% | -55% | -1% | -40% |
検証結果の中で、3年目の成績が勝率88%、プロフィットファクター300オーバーと非常に際立っています。
そのまま「アメリカ大統領就任3年目システム」としてもいいくらいの成績です。
唯一気になるのは直近で2回連続して負けているという点です。
負けたのはオバマ政権の1期目と2期目のそれぞれの就任3年目にあたる2011年、2015年の2回でした。
ただし、負けたといっても最大ドローダウンは1%とごくわずかですし、1期目は翌年の2012年の年初には2011年の年初よりもプラスになっていますし、2015年も翌2016年の3月には2015年年初の値を上回っています。
就任3年目以外の年では、総損益の点で良かったのは順番に2年目、1年目、4年目の順でした。
4年目が一番良くなかったのは、政権末期のいわゆるレームダック現象の影響があるからだと思われます。
(ただし、勝率やプロフィットファクター、最大ドローダウンの点では、4年目は3年目には劣るものの、1年目や2年目よりも優れていました。)
共和党政権・民主党政権の株価への影響(アノマリー)
次に、共和党政権と民主党政権の違いによって、株価に与える影響がどう違うのかを分析します。
一般的に共和党政権は小さな政府で親ビジネス路線であることが多く、民主党政権は大きな政府で親ビジネス路線ではないことが多いとされます。
さきほどと同様に1950年からのS&P500指数の値動きで分析します。
政権政党 | 共和党 | 民主党 |
総損益 | 341% | 517% |
総取引数 | 5 | 5 |
平均損益 | 68.2% | 103.4% |
勝率 | 80% | 100% |
プロフィットファクター | 11.8 | – |
最大ドローダウン | -32% | – |
すると、面白いことに親ビジネス的であるとされる共和党政権の方が勝率が低くなる一方、民主党政権は勝率100%となりました。
(取引回数が少ないのは、大統領が代わっても2大政党間の政権交代がなければトレードを継続しているからです。)
一般に親ビジネス的であるとされる共和党政権のほうが成績が悪くなっているは、①政権発足前の大統領選挙の前後で上昇がすでに株価に織り込まれている、②共和党政権は親ビジネス的であるがゆえに無理をしがちであり、過剰レバレッジを原因としたバブルを生み出しやすいといった理由があるためだと考えられます。
②については実際、1991年ごろの日本のバブル崩壊は(アメリカ大統領のせいとはいえませんが)共和党のブッシュ(親)政権の時代でした。
また、2001年のインターネットバブルの崩壊は共和党のブッシュ(子)政権の時代でしたし、2008年のリーマンショックもブッシュ(子)政権の時代でした。
このように最近のバブルの崩壊はすべて共和党政権(というかブッシュ一族)のときに起こっています。
共和党政権は親ビジネス路線であるがゆえに、増税など景気の加熱を抑えるブレーキを効かせにくいのではと考えられます。
では、次に共和党政権時に注目して、よりディフェンシブに共和党政権の就任3年目だけトレードをするとどうなるかを確認してみます。
総損益 | 149% |
総取引数 | 9 |
平均損益 | 16.6% |
勝率 | 100% |
プロフィットファクター | – |
最大ドローダウン | – |
そうすると共和党政権の就任3年目は株価(S&P500)は100%値上がりしました。
(さきほどの「アメリカ大統領就任3年目システム」で損失になったのが民主党政権(オバマ政権)のときだったので、共和党政権だけでみた就任3年目の成績が勝率100%になるのは当然ですね。)
以上をまとめてみると、民主党政権時は株価は100%値上がりするので、単純なバイアンドホールド戦略が適しており、共和党政権時はバブルの崩壊に備えて就任3年目だけトレードすべきという結論になります。
最後に共和党政権の就任3年目と民主党政権の就任1年目から4年目まで株を買った場合の売買成績を検証してみます。
総損益 | 667% |
総取引数 | 14 |
平均損益 | 47.6% |
勝率 | 100% |
プロフィットファクター | – |
最大ドローダウン | – |
これが過剰なカーブフィッティングでないか十分注意する必要がありますが、目論見通り勝率100%の素敵な成績になりました。
共和党政権時の1年目、2年目、4年目は暇(ヒマ)になってしまいますが、「休むも相場」ですので、それもアリではないでしょうか。