道州制の4つのメリットと2つのデメリット|道州制についてわかりやすく解説

地域経済

道州制とは、わかりやすくいえば国のグループ分けを新しくすること

道州制とは、現在全国に47ある都道府県を廃止して、「道」と「州」というより広域な自治体に再編成することです。

わかりやすくいえば、道州制とは、国をいまの都道府県よりも大きなグループで新しくグループ分けしなおすことです。

以前に出された政府案などを参考にすると、全国に9から13程度の道州を設け、現在の市町村も廃止され、20万人から30万人規模の「基礎自治体」という形でまとめられ、道州の下にぶらさがるイメージになります。

つまり、現在、国-都道府県-市町村という3層構造になっている統治の仕組みを国-道州-基礎自治体という新しい形にするということを意味します。

このような道州制のメリット・デメリットを考えてみます。

道州制のメリットとは:4つのメリット

地方のイメージ

まず、道州制のメリットについて述べます。

道州制のメリット1:行政の効率化

現在、国が持っているさまざまな権限や税金の財源を新しくできた道州に移譲することで、行政の効率を高めることが期待できます。

この権限や財源の移譲により、道州は地方自治体というよりは、防衛や外交を除く内政において国のような役割を一部担うことになります。

そうすると、日本の中に複数の国が存在することになり、道州同士の競争が促進されて、効率化が進むと考えられます。

また、現在、都道府県は47あり、それぞれが職員や議員を抱えています。

道州制および基礎自治体の導入により必要な職員や議員の数が減るため、人件費などの経費を削減することができ、行政をスリム化し効率を高めることができます。

これは経営学の組織論で事業部制組織のデメリットを克服するために事業本部制が導入されるケースと同じです。

事業部制では複数ある事業部がそれぞれ経理や総務といったスタッフ部門を個別に抱えるため、会社全体で経理や総務を統括する場合に比べどうしても非効率となります。

そのデメリットを克服するため、いくつかの事業部を事業本部としてまとめ、事業本部ごとに経理や総務をまとめて管理することで、効率化を図ることができます。

この話でいう事業部にあたるのが現在の各都道府県であり、事業本部にあたるのが各道州になります。

現状、各都道府県ごとに管理部門や議会を抱えていると効率が悪いので、道州ごとにまとめることで効率化できますよということです。

これと同じ話は、大学においても生じています。

国立の名古屋大学は、岐阜大学と連携し、運営を統合することを検討しています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29530210Y8A410C1000000/

これも大きな組織となることで管理部門の効率化を図ることが狙いの1つにあると思われます。

少子高齢化が進み、経済も右肩上がりとはいえない現状では、規模を大きくして効率を改善するという話が会社、大学、自治体を問わず、どの分野でも必要になっています。

道州制のメリット2:地方自治の促進

道州制が実現した場合、それぞれの道州は現在の都道府県よりも権限や税金の財源において強い力を持つことになります。

大きいとはいえあくまでも地方自治体である道州が強い力を持つことは、地方自治の促進につながります。

道州制のメリット3:地域間格差の是正

道州制は新設される道州に強い権限をもたせるため、各道州の中心となる都市の経済規模は現在よりも拡大するものと思われます。

その結果、現在、東京に一極集中している経済や人口についてもある程度緩和されることから、地域間格差の是正が期待できます。

道州制のメリット4:国の行政のスリム化・効率化

道州制が実現した場合、国は外交や防衛、通貨制度など1国全体に関わる役割を担います。

これは経済学者のアダム・スミスが主張する夜警国家に近い体制といえ、国レベルでは小さな政府が実現できるため、国の行政のスリム化、効率化が期待できます。

ちなみに、夜警国家の夜警とはパトロールのことであり、国は警察や国防などのみに注力し、無駄な公共事業などは行うべきではないというアダム・スミスの国家観を夜警国家といいます。

道州制のデメリットとは:2つのデメリット

では、次に、道州制のデメリットについて考えてみます。

道州制のデメリット1:過疎化の進展

道州制により、各道州の中心地域は人口流入が期待できますが、逆に中心地域以外では過疎化が進展するおそれがあります。

道州の中心地域から外れた県は、県全体で過疎化が進む可能性が高く、現在以上に空き家問題や少子高齢化の問題がおこるかもしれません。

道州制のデメリット2:地域間格差の拡大

メリットの3の反対ですが、道州制では道州間の競争が促進される結果、競争に破れた道州は今以上の人口流出や経済の低迷に見舞われるおそれがあります。

その結果、道州間で逆に地域間格差が拡大してしまう可能性もあります。

そもそも道州制は合憲なのか?

裁判のイメージ

憲法92条には「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定されています。

ここでいう法律というのは地方自治法のことです。

では、「地方自治の本旨」というのは何でしょうか。

地方自治の本旨というのは、地方自治の基本という意味で住民自治団体自治という2つからなります。

住民自治というのは、住民が自らの意思と責任により地方自治を行うということです。

また、団体自治というのは、地方公共団体が国から独立して自主性をもって地方自治にあたることをいいます。

ですから、地方自治の本旨である住民自治と団体自治が守られさえすれば、現行の都道府県-市町村の仕組みから道州制による道州-基礎自治体の仕組みに移行することは合憲といえます。

ただし、解釈論として、憲法92条の「地方自治の本旨」が都道府県-市町村の仕組みを前提としているとすれば、道州制は憲法の規定に抵触するおそれがあることになります。

その場合は、道州制の導入には憲法の改正が必要になります。

大阪都構想と道州制

大阪城、大阪のイメージ

大阪府を東京と同じ「都」に格上げするという大阪都構想は、現行の都道府県の一部である「府」の権限を強化するため、道州制の流れに反するようにも思われます。

この点について、大阪都構想の論者は、都構想により、東京一極集中を是正し、強い大阪を実現した後に、道州制として関西州となるとしています。

Q3. 道州制と大阪都構想とは矛盾しないのですか?

全く矛盾しません。明治維新以来続いてきた中央集権(霞が関の官僚)体制や東京一極集中の弊害を打破しようとする地域主権の考え方は道州制も大阪都構想も同じですが、その対象となる地域、実現時期及び行政権限が違います。
道州制は関西全域(大阪、京都、兵庫、滋賀、和歌山、奈良等)を対象としていますが、都構想は大阪府を対象としています。
大阪都構想で、まず強い大阪を実現し、次の段階で、関西全域の府県を発展的に解消し、国が担うべき権限を、外交、防衛、通貨等に絞り、その他を関西州に移譲する制度(道州制)に移行する形を目指しています。

大阪維新の会 うるま譲司氏ホームページ(過去記事)より引用

日本維新の会は19日、「道州制調査会」(松浪健太会長)の初会合を国会内で開き、大阪府・市特別顧問の堺屋太一元経済企画庁長官が講演した。堺屋氏は維新の看板政策「大阪都構想」を「道州制の第一歩だ。道州制を導入すれば、東京一極集中がなくなり、地域格差は是正される。日本の再生には道州制しかない」と強調した。

産経ニュースより引用

つまり、大阪都構想を経てからの道州制という流れのようですが、東京は道州制導入後も1つの道州となることも可能でしょうが、大阪については経済規模からして、それは難しいと思われます。

よって、道州制を導入するタイミングで大阪都を他の都道府県と同じように解体しなければ、国-関西州-大阪都-特別区・基礎自治体の4層構造になってしまい効率が阻害されかねません。

大阪都構想が再び盛り上がるかはわかりませんが、できればそれよりも早く国全体で道州制が実現できた場合の方が混乱は少ないのではないでしょうか。

平成の大合併に学ぶ道州制の是非

平成の大合併とは、小泉政権における三位一体改革の一環ととして行われた市町村合併です。

これは複数の市町村を一つにまとめるという点で、道州制における基礎自治体の整備を先取りしたものともいえます。

この平成の大合併の是非については意見の分かれるところですが、否定的に評価する意見としては、もとの市町村間での格差の拡大財政の効率化が思うように進まなかったことによる住民サービスの低下などが理由として挙げられています。

これらは道州制の導入時における基礎自治体でも起こり得る問題ですし、道州レベルにおいても規模を大きくした形で生じうる問題といえます。

ただ、平成の大合併によりこういったマイナスの影響が生じているのは、コンパクトシティー化への対応の遅れやもとの市町村の施設や人員をそのまま維持していることによる非効率さが残っていることも理由としてはあると考えられます。

道州制の導入を議論する際には、このような経験も活かすことが望ましいと思われます。