会計学

保守主義の原則(安全性の原則)とは|企業会計の適用例:引当金、棚卸資産など

保守主義の原則

保守主義の原則とは

保守主義の原則とは、企業会計原則の一般原則の1つであり、安全性の原則ともいいます。

企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならないという原則が保守主義の原則です。

ここで企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合というのは、費用や損失が発生する場合をいいます。

保守主義の原則では、「予想の利益は計上してはならないが、予想の損失は計上しなければならない」とされます。

これをわかりやすくいえば、利益をできるだけ控えめに計上するという保守的な考え方が保守主義の原則の意味になります。

保守主義の原則は一般原則の中でも重要ですので企業会計原則の文言を紹介します。

「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。」

(企業会計原則・一般原則)

また、企業会計原則注解においても保守主義の原則は述べられています。

「企業会計は、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行わなければならないが、過度に保守的な会計処理を行うことにより、企業の財政状態及び経営成績の真実な報告をゆがめてはならない。」

(企業会計原則注解)

ですから、保守的な会計処理が求められるけれど、たとえば本当は黒字なのに赤字と報告するなど過度に保守的になってはいけませんよということです。

保守主義の原則の適用例

conservationこの保守主義の原則の適用例には、棚卸資産や引当金、減価償却費などがあります。

棚卸資産の評価における低価法の採用

棚卸資産というのは、お店の商品のことです。

そして、低価法というのは、まだ売れていない商品が値下がりした場合に、その値下がりした分を費用として処理することをいいます。

これに対して、棚卸資産の評価には、原価法という方法もあります。

原価法というのは、商品が値下がりしても、商品を仕入れた価格のままで評価し続ける方法になります。

この2つの方法のうち、低価法は評価損が計上されるため、原価法よりも保守的といえます。

低価法は商品が値下がりしたときに費用として処理するので、その分利益が小さくなります。

したがって、原価のままで据え置く原価法よりも保守的だといえるわけです。

棚卸資産の評価における後入先出法の採用(インフレ状況下)

インフレというのは、物価が持続的に上昇することをいいます。

インフレの場合、商品は持っているだけで値上がりしていきます。

ですから、商品の仕入れの時期と売上の時期がズレていると、そのズレの期間に値上がりした金額が売上の金額に含まれることになり、その分利益が大きくなります。

この利益を取り除くのに適した方法が後入先出法です。

後入先出法とは、棚卸資産の単価の決定方法の1つですが、後に仕入れた商品が先に売れていくと仮定して処理する方法です。

インフレ状況下では、後に仕入れた原価のほうが高くなります。

このようなときに後入先出法を採用すると、売上に対応する売上原価が高い単価が適用されます。

そうすると売上から売上原価を引いた利益が、結果として小さくなります。

したがって、インフレ状況下における後入先出法の採用は、(先に仕入れた商品が先に売れていくと仮定して処理する)先入先出法を採用するよりも保守的だといえます。

引当金の計上

保守主義の考え方により、費用はできるだけ早めに計上し、収益はできるだけ遅めに計上するのが望ましいといえます。

その意味で、将来の費用を見越して計上する引当金の設定は、保守主義の考え方に合致しているといえます。

減価償却における定率法の採用

保守主義の考え方からすれば、費用は早めに計上すべきだということになります。

ここで減価償却とは、固定資産の価値の減少分を費用として計上するものです。

この減価償却の方法には定率法定額法などの方法があります。

定率法は(毎期一定額の減価償却費を計上する)定額法よりも初期の減価償却費が大きくなります。

そのため、定率法によれば、早めに費用を計上することができます。

したがって、定率用の採用は保守主義の原則に適しているといえることになります。

定率法は早期に多額の償却を行うため、定額法よりも保守的といえるわけです。

以上が保守主義の原則になります。

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