リーダーシップ論とは何か|経営学のリーダーシップ理論と種類
リーダーシップ論の全体像
リーダーシップ論は経営学の一分野です。
ここでリーダーシップとは、経営目標を達成するために、人々に影響力を及ぼすことをいいます。
ようするに、目標に向かって、みんなを引っ張ってくことがリーダーシップのイメージになります。
リーダーシップ論の研究は、まず資質理論という古い理論からはじまり、次に、行動科学的リーダーシップ論、リーダシップのコンティンジェンシー理論、変革型リーダーシップ理論へと発展していきます。
資質理論(1940年ごろまで)
まずは、資質理論という古い理論からみていきましょう。
資質理論、または偉人理論とか偉人論、特性理論とかいいますが、優れたリーダー(偉人)をピックアップして、彼らに共通の資質を明らかにしようとした研究です。
資質に注目するので、資質理論のことを資質アプローチともいいます。
ここでいう偉人というのはナポレオンやリンカーンなどです。
乱暴にいえば、ナポレオンは背が小さかったことで有名でしたので、背が小さいことが優れたリーダーの資質なんだとしたというようなイメージが資質理論になります。
当然、背の高い優れたリーダーもいっぱいいますので、資質理論は失敗に終わります。
なので結局、資質理論(偉人理論)は、リーダーの資質とその有効性の関係を科学的に説明できませんでした。
行動科学的リーダーシップ論(1940年代後半)
その次に出てきたのが行動科学的リーダーシップ論です。
行動科学的リーダーシップ論は、リーダーシップの類型論ともいわれますが、リーダーシップにはどういうものがあるかグループ分けしたものがリーダーシップの類型論になります。
この行動科学的リーダーシップ論は、大規模組織の小集団における効果的なリーダーシップのスタイルを研究する理論です。
たとえば、会社の中の1つの課とか、部という小さな集団の中で、効果的なリーダーシップを研究するものが行動科学的リーダーシップ論です。
行動に注目するので行動アプローチともよばれます。
行動科学的リーダーシップ論の代表的な研究者は、レビン、リッカート、ブレークとムートン、三隅二不二(みすみじゅうじ)になります。
ちなみに、行動科学というのは、経営学の一分野という意味ではなく、もっと広い範囲に適応される学問的なアプローチの仕方になります。
従来のアンケートなどで意見をきくとどうしても主観が入ってしまうため、客観的な研究がしにくくなります。
たとえば、アンケートで「あなたは嘘つきですか?」と質問した場合、日本人のイメージする「嘘つき」と外国人のイメージする「嘘つき」では、嘘をつく頻度や内容に主観的な違いが生じる可能性が非常に高いです。
主観を排除するためにもっと客観的な「行動」というものに注目して研究しようという学問的なアプローチの仕方が行動科学になります。
つまり、行動科学というのは、人間の行動を科学的に観察することによって、社会科学全般に役立てようとする理論(またはアプローチ法)ということになります。
経営学の分野では行動科学は、動機づけ理論(モチベーション理論)やリーダーシップ理論などに応用されていますが、行動科学への適応例として一番有名なのは経済学への適応である行動経済学です。
行動経済学は、従来の経済学の枠組を超えた新しい領域へと理論を発展させています。
行動経済学の本もたくさん出版されていますが、経済学の本にありがちな数式などは出てこないので、楽しく読めるのでぜひ読んでみてください。
リーダーシップのコンティンジェンシー理論(1960年代)
コンティンジェンシーというのは「状況に応じた」という意味です。
組織論でもコンティンジェンシー理論は出てきますが、組織論のコンティンジェンシー理論と同じように状況に応じて有効なリーダーシップのスタイルは変化するという理論がリーダーシップのコンティンジェンシー理論になります。
状況に注目するので状況別アプローチともいいます。
このリーダーシップのコンティンジェンシー理論の論者には、ハーシーとブランチャード、フィードラーなどがいます。
変革型リーダーシップ理論(1980年代)
変革型リーダーシップ理論とは、変革を実現するために必要なリーダーシップを研究する理論です。
この変革型リーダーシップ理論で求められるリーダー像を変革型リーダーといいます。
変革型リーダーとは、率先して組織を変革していくリーダーシップのことであり、現代のような激変する企業環境で有効なリーダーだとされます。
変化の激しい環境で変化に適したリーダーが求めらるというのは、コンティンジェンシー理論的な考え方からしても妥当だといえます。
この変革型リーダーシップ理論に関連して、特異性クレジットという概念を使って考えてみます。
特異性クレジットとは、リーダーが集団の規範を逸脱するような行動をとった場合、その行動が組織のメンバーにどのくらい許容されるかをしめす信用の度合いのことです。
特異性クレジットのクレジットは、クレジットカードなどと同じ「信用」のことです。
過去の貢献によって特異性クレジットを蓄積したリーダーは、集団の規範から逸脱するような組織の革新を行う際にメンバーからの理解を得やすいと考えることができます。
変革というのは、過去の仕組みを「ぶっ壊す」必要があります。
そうするとどうしても過去の仕組みから利益を得ていた人たちが抵抗して抵抗勢力になります。
そんなときに、「あの人が言うんだったらしょうがないな~」と思ってもらえる信用の度合い、それが特異性クレジットになります。
ただ、特異性クレジットが高い人というのはいわゆる「良い人」が多いと思われますが、良い人というのは「ぶっ壊す」ことには向かないので、そこはジレンマがある気がします。