会計学

引当金とは|簿記的会計的意味、要件、種類(資産の部(評価性)・負債の部(負債性))

引当金とは

会計学における引当金の意味について考えてみます。

引当金で一番有名なものといえば、貸倒引当金ですが、ここでは引当金に関する一般的なお話について確認します。

引当金の定義

引当金とは、将来の費用・損失を当期の費用・損失としてあらかじめ見越計上したときの貸方科目のことです。

たとえば、さきほどの貸倒引当金が引当金の例になります。

貸倒引当金は将来売り上げた債権が返ってこないという損失をあらかじめ見越して計上されるものです。

将来返ってこないという損失を先に費用として計上しておく場合に、相手勘定として計上されるのが貸倒引当金になります。

(借方)費用 ××× /(貸方)引当金 ×××

ですから、貸倒引当金は将来の費用・損失を当期の費用としてあらかじめ見越計上したときに出てくる勘定科目ですので引当金の1つといえます。

引当金の要件

では、この引当金の要件について確認します。

  1. 将来の特定の費用または損失であって、
  2. その発生が当期以前の事象に起因し、
  3. 発生の可能性が高く、
  4. かつ、その金額を合理的に見積もることができること

これらの要件を満たすものが引当金ですから、発生の可能性の低い偶発事象にかかるものについては、引当金を計上できないとされます。

発生の可能性の低い偶発事象というのは、たとえば、訴訟などがあります。

訴訟で敗訴する可能性は、引当金の要件を満たすほど発生の可能性が高いとはいえないということです。

つまり、発生の可能性の低い偶発事象については、③の発生の可能性が高くという要件を満たさないため、引当金を計上することはできないということになります。

なお、この偶発事象と後発事象は名前がよく似ていますが、異なるものなので注意します。

企業会計原則における引当金の例

日本の会計基準である企業会計原則の注解で、引当金の例が挙げられています。

企業会計原則注解が挙げている引当金は、例示列挙であり、引当金の要件を満たすものはすべて引当金となります。

例示列挙というのは、例としてあげているだけで、他にも引当金となるものはあるよということです。

この反対は限定列挙になります。

この場合は、例として挙げられているものしかないよということです。

このように企業会計原則注解が挙げている引当金は、例示列挙なので、このほかにも引当金の要件を満たしさえすれば引当金として計上するということになります。

企業会計原則注解における引当金(例示列挙)

製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給付引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金

これらの引当金の内容について、ここでは製品保証引当金、工事補償引当金、退職給付引当金について確認しておきます。

製品保証引当金

製品保証引当金とは、製品販売後、一定期間内の無料修理保証をした場合において、その支出額に対する費用の合理的見積額をいいます。

製品を売って、将来無料で修理をする場合、その将来の支出額を費用として計上した場合に出てくるのが製品保証引当金になります。

工事補償引当金

工事補償引当金とは、製品保証引当金の一種であり、建設業で設定されるものです。

工事補償と製品保証は、ホショウの字が違うので注意してください。

製品保証の保証は、品質保証の保証なのに対し、工事補償の補償は損害を補償するというときの補償になります。

退職給付引当金

退職給付引当金とは、将来の従業員の退職時に支給される退職給付のうち、当期の負担に属する額を当期の費用として負担させるために設定される引当金です。

将来の退職金の支出について当期の費用として計上した場合に出てくるのが退職給付引当金になります。

たとえば、Aさんが22歳で就職して65歳で退職して65歳のときに退職金を3000万円支払うとします。

このとき、全額をその期の費用としてしまうと費用と収益の対応からいって好ましくありません。

そこで、Aさんが働いている期間に合理的に費用として配分する必要があります。

その時に計上されるのが退職給付引当金になります。

この退職給付引当金は固定負債として記載されます。

なお、この退職給付引当金は、従来は退職給与引当金と呼ばれていましたが、現行制度上は退職給付引当金といいます。

減価償却引当金

また、企業会計原則注解の引当金にはあたらないものとして、減価償却引当金というものがあります。

減価償却引当金とは、減価償却累計額のことです。

ですから、企業会計上は減価償却累計額として処理されます。

減価償却累計額は、毎年の減価償却費の累計として、いままでどれだけ固定資産の価値が減ったかを表すものです。

そのため、減価償却引当金は企業会計原則注解の引当金にはあたりません

減価償却引当金、つまり減価償却累計額は引当金の要件を満たさないので、引当金ではないですよということです。

あくまで減価償却累計額として処理されることになります。

評価性引当金と負債性引当金

引当金には、評価性引当金負債性引当金があります。

評価性引当金とは、資産の部の引当金になります。

つまり、資産勘定からマイナスされる引当金が評価性引当金です。

一方で、負債性引当金とは、負債の部の引当金です。

評価性引当金

資産の部の引当金であり、資産勘定からマイナスされる引当金が評価性引当金ですが、この評価性引当金にあたるのが貸倒引当金です。

ちなみに、この貸倒引当金や減価償却累計額のように資産から引かれる勘定科目を評価勘定といいます。

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負債性引当金

一方で、負債の部の引当金である負債性引当金の例は賞与引当金、工事補償引当金、修繕引当金、退職給付引当金などになります。

なお、評価性引当金も負債性引当金も、企業会計原則注解における要件は同じです。

さきほどみた引当金の4要件は同じということです。

商法上の引当金(旧制度)

商法上の引当金とは、負債性引当金のうち修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金のことをいいます。

従来、この商法上の引当金は、他の負債性引当金とは別の取扱いがなされていました。

ですが、会社法の改正により、他の負債性引当金との区別はなくなりました。

引当金と未払金、未払費用の比較

では、次に引当金とその他の負債項目である未払金と未払費用とを比較してみます。

まずはそれぞれの定義を確認します。

未払金とは、主たる営業取引以外から発生した未払金です。

たとえば、社用車を購入した未払いの代金などが未払金になります。

未払費用とは、経過勘定の一種であり、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合に、すでに提供された役務に対していまだその対価の支払が終わらないものをいいます。

たとえば、家賃・利息などの未払いの費用が未払費用になります。

引当金、未払金、未払費用の共通点

引当金、未払金、未払費用に共通するのは、まだ支払がなされていないということです。

そのため、将来の現金等の支出(キャッシュ・アウトフロー)を伴う点で3つは共通しているといえます。

引当金、未払金、未払費用の相違点

引当金は、要件にあるように、将来の特定の費用または損失です。

これに対し、未払金は、すでに発生した費用で、その支払が済んでいないものになります。

そして、未払費用は、継続的役務提供契約における当期に発生した費用で、次期以降にその支払がなされるものになります。

このように、どのような費用であるかという点で、3者は異なるといえます。

引当金のお話は以上です。