会計学

資産の評価方法の原則とは|原価主義、時価主義、低価主義の違い

資産の評価方法とは

企業が調達してきた資金がある瞬間にどういう形で運用されているかを表すものが資産になります。

この資産には、預金、商品や有価証券、土地、建物などがありますが、その金額をどう決めるか、それが資産の評価方法です。

貸借対照表(B/S)に記載する資産の金額のことを貸借対照表価額(略してB/S価額)といいます。

この貸借対照表価額の決定方法が資産の評価方法ということになります。

資産の評価方法=貸借対照表価額(B/S価額)の決定方法

この資産の評価方法(B/S価額の決定方法)には、原価主義、時価主義、低価主義という3つがあります。

まず、原価主義とは、資産を買った時の値段である取得原価で評価する考え方です。

一方、時価主義とは、資産を評価時点(通常は期末)での時価で評価する方法です。この時価は通常、市場価格を使います。

そして、低価主義というのは、時価主義と原価主義の折衷的な方法になります。

つまり、資産の原価と時価とを比較して、いずれか低い方で評価する方法が低価主義です。

資産の評価方法①:原価主義

原価主義原価主義とは、資産を取得原価で評価する考え方です。

この原価主義は、現行の企業会計における原則的な資産の評価方法になります。

原価主義の長所短所

ここでは原価主義の長所と短所についてみていきます。

原価主義の長所Ⅰ:検証可能性が高く、資産評価の客観性、確実性が確保できる

(∵ 領収書などの証憑を確認しやすく、誰の目からみても金額が明らかであるから)

資産をいくらで買ったのかという情報は領収書とかレシート、請求書で確認することができます。

そのため、(あとから検証できる)検証可能性が高く、資産評価の客観性、確実性が確保できるといえます。

ちなみに領収書とかレシート、請求書など取引の証拠になる資料を証憑(しょうひょう)といいます。

原価主義の長所Ⅱ:未実現利益の計上を防止できる

(∵ 売却されるまでは、資産は取得原価で評価され続けるから)

原価主義では、資産は買ったときの値段、取得原価で評価され続けます。

そのため、資産が途中で値上がりしても、評価益を計上するということはありません。

このようなまだ売却が終わっていない評価益を未実現利益といいます。

原価主義はこの未実現利益の計上を防ぐことができます。

期末の時点で資産の時価が取得原価を上回っている場合、利益が生じている(=儲かっている)ことになります。

ですが、この利益はまだ売ってしまったわけではないので確定していない未実現の利益といえます。

原価主義ならこのような未実現の利益を計上する恐れはないということです。

売却されるまで、つまり利益が実現するまでは、資産は取得原価で評価され続けるから未実現の利益は計上されませんよということですね。

一方で、原価主義の短所をみてみます。

原価主義の短所Ⅰ:物価変動時には資産の評価額が時価と乖離する

(∵ 物価変動時には時価が取得原価と大きく乖離するが、資産は取得原価で評価され続けるため)

デフレやインフレで資産の時価が大きく動く場合、取得原価と時価の差額が大きくなってしまいます。

そうすると貸借対照表が資産の価値を適切に表すことが出来なくなります。

そのため、物価変動時には資産の金額が時価と乖離することになってしまいます。

資産の評価方法②:時価主義

時価主義次に、時価主義についてです。

時価主義とは、資産を評価時点(通常は期末)での時価(市場価格)で評価する方法です。

短めにいうと、資産を期末の時価で評価する方法が時価主義になります。

時価主義の時価とは、正味売却価額または再調達原価を意味するとされます。

正味売却価額とは、販売市場における価格から見積経費やアフターコストなどを引いたものをいいます。

また、再調達原価とは、購買市場における価格をいいます。

時価主義の長所短所

この時価主義の長所短所は、原価主義の長所短所の反対になります。

時価主義の長所Ⅰ:評価時点の経済的実態を適切に表示することができる

(∵ 評価時点の経済的実態を適切に表すのは、原価よりも時価であると考えられるから)

時価で評価することによって、期末における資産の価値を適切に表すことができるということが時価主義の長所です。

時価主義の短所Ⅰ:資産の時価を客観的に決定しにくいため,検証可能性および客観性,確実性に欠ける

(∵ 時価は日々変動する上、何を時価とするのかが問題となるから(正味実現可能価額か、再調達原価か))

期末の時点の時価がいくらになるのかは市場で取引されている株式のように時価が客観的に分かる資産ならいいですが、たとえば不動産などだと(実際に売買が行われるわけではないので)期末の時価が具体的にいくらなのかは客観的にはわかりません。

そのため、時価主義は検証可能性、客観性、確実性に欠けるといわれています。

時価主義の短所Ⅱ:時価が取得原価を上回っている場合には、未実現利益が計上される

(∵ 売却が済んでいない資産の利益は未実現であり、そのような未実現の利益を計上すると、将来時価が低下した場合、損失を計上しなければならなくなる(=利益の処分可能性が問題となる))

原価主義で見たように時価が取得原価を上回っている場合の利益はまだ売っていないので、確定していない未実現の利益になります。

このような未実現の利益を計上してしまうと、利益はあっても実際に現金が手元にない、つまり、資金的裏付けのない利益が計上されることになります。

また、そのような未実現な利益をもとに配当を行えるかという利益の処分可能性も問題となります。

つまり、このような利益をもとに株主に対する配当金の支払などがなされると、本当なら未実現の利益なので配当すべきでない利益が配当されることになり、利益の処分可能性というのも問題になってきます。

未実現の利益は、まだお金を手にしているわけではないので、本当なら配当すべき利益ではないということになります。

その点で利益の処分可能性が問題になる、これが時価主義の2つ目の短所になります。

資産の評価方法③:低価主義

低価主義では、3つ目の評価方法である低価主義についてです。

時価主義と原価主義の折衷的な方法が低価主義になります。

低価主義とは資産の原価と時価とを比較して、いずれか低い方で評価する方法です。

低価主義による場合、未実現利益は計上されないのに対し、未実現損失のみ計上されることになります。

たとえば、原価が100で時価が120の場合、低いのは原価なので低価主義では原価の100で評価します。

したがって、この場合、時価が原価を上回っている部分である未実現利益20は計上されません。

一方で、原価が100で時価が70の場合、低いのは時価なので時価の70で評価されます。

この場合は、未実現の損失である30が計上されることになります。

このように、時価が値上がりしたときは原価で評価するという原価主義的な方法をとり、値下がりしたときだけ時価で評価するという時価主義的な方法をとる折衷的な方法が低価主義になります。

この低価主義は原則的な方法である原価主義に比べ、損失を早めに計上することになるので、保守主義の原則に適合する方法だといえます。

保守主義の原則の適用例として、棚卸資産の評価における低価法の採用が挙げられるのはそのためです。

低価法は評価損が計上されるため、原価法よりも保守的といえるわけです。

保守主義の原則
保守主義の原則(安全性の原則)とは|企業会計の適用例:引当金、棚卸資産など保守主義の原則とは|保守主義の原則の適用例:棚卸資産の評価における低価法、後入先出法(インフレ状況下)、引当金、減価償却における定率法|保守主義の原則とは企業会計原則の一般原則の1つで安全性の原則ともいいます。企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければなりません。...

資産の評価方法の適用

以上の3つ(原価主義、時価主義、低価主義)が、資産の評価方法ですが、それが会計学でどのように適用されているかを確認します。

まず、原則は原価主義になります。

これに対し、例外として、時価主義は売買目的有価証券やその他有価証券といった有価証券の評価で認められています。

株などの有価証券は証券取引所で取引されることで価格が決まります。

そのため、時価にある程度、客観性があると考えられます。

そのため、時価で評価しても不都合が少ないので、有価証券には時価主義の適用が認められています。

一方、低価主義は棚卸資産の評価では原則的な方法とされています。

以上が資産の評価方法の原則である原価主義、時価主義、低価主義のお話になります。

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