会計公準と企業会計原則|日本の会計原則|会計公準の3要素
日本の会計原則
会計のルールのことを会計原則といいます。
この会計原則とは具体的にどういったものか、そして、日本の会計原則は何かということを簿記や会計の前提としてみていきましょう。
会計公準とは|会計公準の3要素
株主や債権者などの企業外部の利害関係者に対して、企業の財政状態・経営成績を報告することを目的とする会計を制度会計といいます。
この制度会計の前提となるものに、会計公準があります。
会計公準というのは、会計が行われるための基礎的な前提です。
会計公準:一般に公正妥当と認められている事項として現実の会計の観察から帰納的に抽出されるもの
帰納的というのは、具体例から一般的なルールを導き出すことをいいます。
現実の会計を具体的に観察して、その中から一般的な会計のルールを導いたもの、それが会計公準になります。
ですから、会計公準というのは、現実の会計をうつす鏡のようなものだといえますね。
そのため、経済・社会環境の変化により会計原則が変化すれば、会計公準も変化するとされます。
会計公準は、前提となるものであるとともに、現実の社会から影響も受けますよということです。
この会計公準の内容には、企業実体の公準、継続企業の公準、貨幣的測定の公準という3つの要素があります。
まず、企業実体の公準とは、企業はその出資者から分離した別個の会計単位であるとする前提です。
企業は出資者から独立して、企業自体の立場から会計上の計算・記録を行う考えて、会計の範囲を限定するものが企業実体の公準になります。
次に、継続企業の公準とは、企業は人為的に定めた一定の期間に区切って期間計算が行われるとする前提です。
企業は解散や精算を予定せず、永久に事業を営むという仮定に基づいて会計処理がされます。
これをゴーイングコンサーンの仮定といいます。
このゴーイングコンサーンの仮定を置いた上で、企業の全存続期間を人為的に定めた一定期間(1年とか、四半期とか)に区切って会計処理がなされます。
そして、貨幣的評価の公準とは、企業は経済活動を貨幣単位で記録・計算・表示するという前提です。
私たちが生きている貨幣経済では、経済価値は貨幣単位で表現されます。
そのため、会計処理をするにあたって企業は貨幣単位で記録・計算・表示する必要があります。
以上が、会計公準の具体的な中身である会計公準の3つの要素になります。
日本の会計原則=企業会計原則
そして、この会計公準を具体化したものが会計原則になります。
日本における会計原則を企業会計原則といいます。
会計公準
↓具体化
企業会計原則
企業会計原則はその成り立ちとして、アメリカのいわゆる「サンダース・ハットフィールド・ムーア会計原則」とよばれる会計原則から大きな影響を受けているとされます。
この企業会計原則は、企業会計の実務指針および公認会計士の監査指針であるとされています。
企業会計の実務指針というのは、会社が財務諸表を作る上で指針とするという意味です。
公認会計士というのは、会社が作った財務諸表を外部からチェックする人のことです。
このチェックのことを監査といいます。
公認会計士の監査指針とは、公認会計士が財務諸表のチェック、つまり、監査をするにあたって指針とすべきものという意味です。
ですから、企業会計原則とは、会社が財務諸表をつくるためのガイドラインとしても使われるし、公認会計士が財務諸表をチェックするための指針にもなるということです。
たとえていうと野球のルールブックみたいなものが企業会計原則になります。
野球では選手はルールブックにのっとってプレイしますし、審判もルールブックにそってジャッジをします。
会計の世界でこの野球のルールブックのような役割をするのが企業会計原則になるよということです。
この企業会計原則の内容ですが、企業会計原則は、一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則と企業会計原則注解という4つから構成されています。
一般原則の下に損益計算書原則と貸借対照表原則があって、その全体を補足する注解として企業会計原則注解があるというイメージになります。
企業会計原則における財務諸表
この企業会計原則に基づく財務諸表には、貸借対照表、損益計算書、財務諸表附属明細表、利益処分計算書の4つがあります。
- 貸借対照表:会社の財政状態(資産・負債など財産の状態)を表す財務諸表
- 損益計算書:会社の経営成績(売上高・利益など)を表す財務諸表
- 財務諸表附属明細表:貸借対照表や損益計算書の明細表
- 利益処分計算書:企業が獲得した利益をどのように処分したのかを表す書類
ただし、このうち利益処分計算書は現在は作成されていません。
このことから分かるように、残念ながら企業会計原則は少し古くなっています。
そのため、実際の実務では企業会計原則に新しいルールである別の会計基準を付け加えて、新しいルールの方を優先的に適用する形で財務諸表が作成されています。
このように企業会計原則は、それ単体では現行制度と比べると古くなっていて、企業会計原則のルールの中でも、バリバリの現役の部分ともう使われなくなってしまっている部分が混在していますので注意が必要です。