経済学

経済学を勉強するのは不経済?役に立たない?それでも経済学を勉強する意味はある

経済学を勉強するのは不経済?

経済学を勉強するのは役に立たないとか、割に合わないという意味で「経済学を勉強するのは不経済」ということがあります。

どうして経済学は不経済などといわれるのでしょうか。

いわゆる近代経済学とよばれる経済学は大きくミクロ経済学マクロ経済学にわかれます。

ミクロ経済学は1つの商品(財)を供給する市場を分析し、マクロ経済学は1つの国全体の経済を分析します。

ミクロ経済学・マクロ経済学の分析の目的は何かといえば、結局、どの政策が役に立つかということです。

マクロ経済学では一国全体の経済の状況を良くするためには、公共事業などの財政政策を実施すれば良いのか、金利を下げるといった金融政策を実施すれば良いのか、それとも政策は無効であり、行わない方が良いのかといったことを分析します。

また、ミクロ経済学は1つの財の市場にしぼって経済の効率性を分析するものですが、ある市場(たとえば自動車市場)についてミクロ経済学的な視点だけでいくら分析してもそれだけでは自動車市場のスペシャリストにはなれません。

結局はミクロ経済学でも、市場がうまく行っていないときに税金や補助金の効果といったものを余剰分析という手法により分析するという政策の分析が大きな目的になるからです。

以上から、経済学とは、主に政策を立案し、実行する政府や自治体のための学問だといえることになります。

その意味で、政策の実施主体ではない民間企業や個人が経済学を勉強しても、政策の是非を判断する助けにはなるため投票行動には役立ちますが、それ以外では経済学を勉強する意味は薄くなることになります。

経済学は政策の指針としても役に立たないのか?

また、経済学は本来の目的であるはずの政策の指針としても役に立たないとか、場合によっては有害であるとさえいう人もいます。

経済学が役に立たないとされる理由は、経済学は「転ばぬ先の杖」としては機能せず、不況やショックが起こってから、後付でしか経済事象を説明することができないといわれるからです。

経済学の大家のケインズは世界恐慌が起こってから需要を重視する総需要管理政策を主張しましたし、シカゴ学派のフリードマンはオイルショック時のスタグフレーション(不況+インフレ)が起こってから、それを説明するために自然失業率仮説を提唱しました。

そのため経済学は後付の学問であり、将来の指針としては役に立たないといわれるわけです。

これは株などのトレード手法の1つであるシステムトレードにおいてみられる最適化の罠と同じ現象です。

システムトレードは過去のデータの値動きを分析してルールに基づいて機械的に売買する手法ですが、最適化の罠とは過去のデータに過剰に最適化してしまい将来の値動きをうまく捉えられないことをいいます。

経済学もシステムトレードと同様に、過去に起こった経済事象を理論的に説明するための学問ですので、いままでに一度も生じていない未曾有の出来事についての指針とはならないといえます。

経済学のディスアドバンテージとは?

また、経済学、特に近代経済学にはほかの学問と比べて非常に不利な立場に置かれています。

それは経済学だけが数式的な説明を求められるという点です。

人間の活動を扱った学問には、経済学のほかに経営学法学、心理学などがあります。

経営学は会社の経営を効果的に行うための学問ですが、会社の経営に関する数式による理論的なモデル化などは求められません。

また、法学では当事者間の利益のバランスをとるという利益衡量を行いますが、利益衡量のための方程式などは必要とされませんし、方程式化ができるとも思われていません。

当然、人間心理を扱う心理学も統計的なアプローチはとられるとしても、人間の多様な意思決定やエゴについての数式的なモデル化などは不可能だと考えられています。

これに対し、経済学だけはなぜか経済事象についての理論的なモデル化が必要だとされています。

経済事象はほかの学問よりも大きな人の群れを扱うため、大数の法則が働きやすく、事象のモデル化をしやすいともいえますが、それを加味しても、会社経営や利益衡量のモデル化ができないのに、経済事象についてだけは理論的な数式によるモデル化ができるするのは乱暴だと考えざるを得ません。

にもかかわらず、モデル化を要求されるという不利な立場に置かれ、モデルが間違っていれば非難されるというのが、経済学と経済学者のディスアドバンテージといえます。

それでも経済学を勉強する意味はある

以上のように経済学は将来の指針とはなりにくいという限界や数式化という過剰な枷(かせ)があります。

ですが、それでも経済学を勉強することには意味があるといえます。

経済学は新しい問題の解決にはあまり役立たないかも知れませんが、過去に何度も生じている経済事象の説明には優れているといえます。

また、さきに述べたように増税や減税といった政策の良し悪しを判断する指針になるのが経済学ですので、少なくとも典型的な政策の是非についてのたたき台にはなります。

2018年にフランスで燃料税の増税に反発して非常に大規模なデモが生じましたが、この燃料税の増税は経済学的には地球温暖化という外部不経済(市場の外で悪い影響が生じること)を是正するための典型的なピグー税(外部不経済を是正するための政策)だといえます。

フランス市民が燃料税に反対するのは自由ですが、増税という政策に反対するにしても少なくとも外部不経済に対するピグー税の役割(=経済の歪みをあらわす死荷重の解消)を理解してから反対すべきです。

その意味では、生活者であり、投票者である有権者全員が経済的な素養を身につける必要があるものといえるのではないでしょうか。