日本の世代間格差の問題|年金格差、氷河期世代|世代間格差は世帯的には問題ない?

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日本における格差問題

日本でも近年格差が問題になっています。

格差には、男女格差、人種格差や都市と地方との格差などいろいろありますが、中でも少子高齢化の進む日本で問題となっているのが世代間格差です。

世代間格差とは、生まれた時代によって生じる格差のことです。

そもそも世代とは

世代についてのはっきりとした定義はありませんが、ここでは日本経済新聞の定義によってみてみます。

戦後の世代には団塊の世代、新人類、バブル世代、団塊ジュニア(就職氷河期世代)、ゆとり世代と続いています。

生まれた年でいうと、団塊の世代は1947年から49年生まれまで、新人類は1950年代後半から64年生まれまで、バブル世代は1965年から69年生まれまで、団塊ジュニア(氷河期世代)は1970年から84年生まれまで、ゆとり世代は1987年から2004年生まれとなっています。

世代間格差の問題の原因

世代間格差の問題が生じる大きな原因となっているものに年金の問題があります。

年金は現役時代に積み立てておいた資金を取り崩す形で、働けなくなった引退後の時代に死亡するまでの終身の期間に渡って受け取るものです。

ですが、日本人の平均寿命が伸び続けた結果、引退後の時期が長くなり、支払いが大きくなったため、年金の財源が足らなくなってしまいました。

そのため、年金の財源(財政方式)として、従来の積立方式ではなく、実質的な賦課方式に切り替えられました。

積立方式というのは、年金給付の財源を事前に積み立てておく方式です。

一方、賦課方式というのは、その時々の加入者からの保険料で年金給付をまかなう方式になります。

年金の財源の不足するのにしたがって、日本の年金制度は、実質的な賦課方式に切り替えられることになります。

これを修正積立方式といいます。

積立方式は、インフレの影響を受けやすいという問題がありますが、自分で積み立てた分を受け取るので、財源の不足は本来問題になりません。

ですが、長生きする日本人にあわせて年金を支払った結果、従来の計画通りに年金を支払ったのでは財源が足らなくなってしまいました。

一方、賦課方式の場合、少子高齢化などの人口構成の変化に影響を受けやすいという問題があります。

賦課方式のイメージは自転車操業です。

現役世代に賦課した年金の保険料をその時点の高齢者に受け渡す(スルーパスする)方式ですので、少子化により現役世代が減れば存続するのが難しくなります。

その結果、若い世代になればなるほど、年金の受取額と年金の掛け金の支払額との差でみた純額ベースの受取分が小さくなってしまうという世代間格差が生じることになりました。

なお、年金の受取と掛け金の支払いを倍率としてみると、世代間格差は生じないという厚生労働省の試算もありますが、これは支払いと受取りの時期を計算上そろえるために使う利子率(割引率)を不当に低くしたためだとも批判されています

ただし、現在のように金利が長期間低下している状態においては、割引率はもっと低くても良いのかもしれません。

そう考えると年金の不公平はさほどでもないといえる可能性もあります。

このような年金の世代間格差を是正するためには、どこかのタイミングで年金の財源を少子化の影響を受けやすい保険料ではなく、消費税などの税金で賄う形に変更する必要があります。

消費税で賄うというと抵抗がある人もいるかもしれませんが、税金の中でも特に消費税としているのは、所得税や法人税は景気の影響を受けやすいため、景気が悪いときこそ大切になる年金の財源とするのは妥当ではないからです。

本人の努力だけの問題ではない就職氷河期という時代

一方で、年金とは別に世代間格差で問題となるのが就職氷河期にあたる団塊ジュニア世代です。

団塊ジュニア世代は、団塊の世代の子どもにあたり前後の世代に比べ人数的に多い世代です。

この団塊ジュニア世代はバブル経済の崩壊後に社会に出て、その後の失われた20年(もしくは失われた30年)を社会人として過ごすことになりました。

特に新卒一括採用の慣行が強く残る日本では、数が多い上に不況というビハインドな状態で社会に出ざるを得なかった団塊ジュニア世代は、就職活動がうまくいかない人も多かったため、現在でも非正規の仕事やフリーターまたはニートの状態でいる人も多く存在しています。

このような就職氷河期世代である団塊ジュニアをそのままにしておくことは、労働力不足が問題となっている現在において大きなマイナスです。

少子化がこのまま将来も進んでいけば、新卒一括採用をこのまま維持することは不可能になります。

それにつれて、今後は外国人労働者など異なるバックグラウンドで働く人が日本の社会でも当たり前になってきます。

そういった仲間の1人として、元ニートやフリーターの氷河期世代の未経験者を受け入れる仕組みを企業だけでなく社会全体も作りあげていく必要があるのではないでしょうか。

世代間格差は世帯的(家族的)には問題ない?

以上のように年金格差や氷河期世代といった特定世代へのしわ寄せという形で世代間格差の問題は存在しています。

ですが、世帯(家族)単位で考えた場合、世代間格差の影響はある程度薄まると考えられます。

ここでいう世帯(家族)というのは、生計をともにする世帯よりも広く、何かあれば助け合える関係という程度の家族や一族という意味で定義します。

1つの世帯(家族・一族)の中には、さまざまな世代が存在します。

1つの家族には、団塊の世代やそれよりも上の全共闘の世代のように年金格差において比較的恵まれた世代もいれば、ゆとり世代のように年金格差において相対的に損をする世代も存在します。

また、就職やキャリアにおいて不遇だった氷河期世代もいれば、就活のイメージが「楽」と表現される時代にあたったゆとり世代もいます。

そうすると世代間の格差は家族単位(世帯単位)では、平準化されてくることになります。

たとえば年金格差で自分の受け取る年金が少なくても、上の世代のおじいちゃん、おばあちゃんが年金で得をしていれば、生活に使わなかった余剰分は遺産として孫である自分も得をすることになります。

また、キャリア形成の格差も生涯所得に還元すれば、年金と同じで世帯単位(家族単位)では不平等はある程度解消されます。

もちろんキャリアにとって不遇な時代を過ごしたことによる個人的な痛みは別の問題としてきちんと対処する必要がありますし、家族間(世帯間)できちんと助け合い(支え合い)がなされるというのが議論の前提にはあります。

このように世帯間(家族間)では世代間格差はある程度解消されることからすると、国として実施すべきなのは、天涯孤独など世代間の助け合いのネットワークから漏れてしまっている人たちの援助をすること、少子化の影響で家族という助け合いのネットワーク自体が細っていくことになるため、従来の血縁関係を超えたネットワークの形成をサポートすることなどが考えられると思われます。