AI投資のデメリット・危険性とは?AI投資とシステムトレードの類似点
AI投資に危険性はあるの?
AI(人工知能)の可能性が囲碁などのゲームを超えていろいろな分野で期待されてきています。
AIを使った投資予測をAI投資といいますが、こういったAI投資には危険性はないのでしょうか。
株や為替(FX)を機械的に売買する投資手法であるシステムトレードと比較しながら、AI投資の危険性やデメリットについて考えてみます。
AIの可能性
囲碁や将棋、ビデオゲームなどでAIは人間の成績を大きく上回るようになってきています。
この動きは今後、人間の活動のあらゆる分野に及んでくるものと思われます。
もちろんAIには得意な分野と不得意な分野があります。
チェスや囲碁、将棋などのテーブルゲームはルールが明確であり、相手は1人だけです。
そのため、AIはAI自身を相手にして練習を重ねることができます。
そのスピードは人間が練習するスピードをはるかに凌駕しています。
このように自分相手に練習できる分野はAIはとても得意としています。
これに対し、天気や地震、株価の値動きなどの予測においては、AIは自分を相手に練習を重ねることは難しいです。
このような自分相手に練習がしにくい分野はAIは不得意だといえます。
AIを使った投資予測であるAI投資は、自分で練習をしにくい後者の分野になるため、囲碁などに比べるとどちらかといえば不得意な分野だといえます。
以下では、このようなAI投資の危険性やデメリットについて考えます。
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AI投資の分類
ただ、一口にAI投資といってもいろいろな形があります。
たとえば、ロボット・アドバイザーは、個人の年齢やリスクに対する考え方に応じて最適な銘柄の組み合わせであるポートフォリオを提案してくれます。
ポートフォリオのアドバイスに加えて、実際に運用や積立を行ってくれるものもあります。
また、AI以前のソフトウェアを使用した取引としてプログラム取引というものがあります。
プログラム取引は、決まったルールに基づいて機械的に取引をするものですが、このルールの構築をAIに任せようという動きもあります。
AI投資とシステムトレードの比較
株や為替などに対する投資手法の1つにシステムトレードというものがあります。
システムトレードは、このプログラム取引系のAI投資とよく似た面のある投資手法です。
システムトレードでは、過去のデータを分析し、その中でなんらかの法則を見つけ出し、その法則の有効性を統計的に検証します。
そして、その法則が将来も再現することに賭け、ルールに従って機械的に取引を行っていきます。
AI投資とシステムトレードの類似点
ですから、ルールに基づいて機会的に取引を行うという点で、システムトレードとプログラム取引自体もともとよく似ているといえます。
そのため、プログラム取引のプログラム部分をAIが作り出すようなAI投資についてもシステムトレードと似た部分が大きくなります。
システムトレード、プログラム取引、AI投資の3つの違いは
分析、検証については人間またはプログラム(ソフトウェア)が行い、取引は人間が行なうのがシステムトレード
分析、検証については人間またはプログラム(ソフトウェア)が行い、取引はプログラム(ソフトウェア)が行なうのがプログラム取引
分析、検証、取引ともにソフトウェア=AIが行なうのがAI投資というイメージです。
システムトレード | プログラム取引 | AI投資 | |
分析 | 人間またはソフトウェア | 人間またはソフトウェア | ソフトウェア(AI) |
検証 | 人間またはソフトウェア | 人間またはソフトウェア | ソフトウェア(AI) |
取引 | 人間 | ソフトウェア | ソフトウェア(AI) |
このように3つの違いは分析、検証、取引を人間が行なうか、ソフトウェアが行うかの違いだといえます。
そのため、おちいり安いあやまちもよく似たものになります。
システムトレードでよくある失敗・危険性とは
システムトレードでよくある失敗・危険性が「最適化のわな」です。
システムトレードで分析の対象となる株価や為替の値動きのデータはすべて過去のものです。
この過去のデータと将来の値動きがまったく同じになることは決してありません。
にもかかわらず、過去の値動きのデータに過度に最適化してしまうことを「カーブフィッティング」とか「過剰最適化」といいます。(カーブフィッティングというのは株価の値動き(カーブ)に過度に最適化(フィット)させるという意味です。)
この過剰最適化のせいで、将来の値動きに不適応となった結果、検証したときほど実際の売買では利益が出ない(もしくは損失となってしまう)ことを最適化のわなといいます。
この最適化のわなにおちいる危険性がシステムトレードのデメリットだといえますが、このような危険性はシステムトレードだけでなく、プログラム取引も、AI投資による投資予測も変わりはありません。
最適化のわなにおちいった場合、過去の検証であるバックテストの成績がどれほどすばらしくても実際に取引をはじめると横ばい(利益なし)や右肩下がり(損失)の成績となってしまいます。
特に自らの取引の売買成績をフィードバックするような仕組みが備わっていない通常のプログラム取引の場合、掛け金(レバレッジ)次第では、損失が指数関数的に拡大してしまうおそれもあります。
一方、プログラム取引系のAI投資の場合、自らの取引の売買成績も学習データとするでしょうから、そのような危険は薄いですが、最適化のわなにおちいり成績が伸びなくなる危険性は十分にあります。
このように最適化のわなにおちいる危険性があるというのがシステムトレードとAI投資に共通したデメリットだといえます。
将来のAI投資は?
では、将来のAI投資はどのようになるでしょう。
将来的には囲碁や将棋のように、(性格もしくは開発段階の異なる)AIが100とか1000とか1万以上とか集まって仮想市場をつくり上げ、そこで100年とか1000年とか分の取引を行うことで、相場というもののあるべき知見へとたどり着く日がいつかはやってくると思われます。
その過程でたぶんAIも最適化のわなにはまると思いますが、それはあくまでシミュレーション上のことですから問題ありませんし、最適化のわなを回避する最善の方法にもAIはやがてたどり着くでしょう。
AI投資の将来像はどうなる?
そのような経験を積んだAIが、実際に人間の参加する株式市場などでどのくらい戦えるかは未知数ですが、たとえば仮想市場で1000年分の経験を積んだAIが株式市場の過去データも取り込んだ上で、実際の取引を行えば、いい成績を残す可能性が高いのではないでしょうか。
そうなった場合、人間にできることといえば、AIが運用するファンドに投資することくらいになってしまうかもしれません。
その日がくるまでは、投資の勉強を続けていきましょう。
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それでも最後の部分は(当面は)人間が担う
ただし、それでも人間が関わる領域は残り続けます。
それは
・稼いだ所得のうちいくら貯蓄に回すのかという貯蓄率の決定
・貯蓄のうちリスク資産にどれだけ配分するかという資産配分(これをアセット・アロケーションといいます)の決定
・資産運用で得た資金をいつ引き出すかという貯蓄の取り崩しの決定
の部分です。
これらについては、いくらAI投資が洗練されても人間の担当として残り続けます。
そして、多くの場合、人間は非合理的な決定をします。
たとえば、AI投資がいかに精緻化したとしても、勝率100%にはなかなかなりません。
そうすると、取引で負けが続くこともたまにはあることになります。
その場合、AIの分析が本当に正しければ、そのまま待っていれば、また運用資金は増えてくるはずですが、運用資金の減少に恐怖を感じた人間は、AIによる運用を止め、資金を引き上げてしまうかもしれません。
どこかがおかしいダメなAIの投資を続けることは破産まっしぐらですが、一時的に生じた資金の減少が、待っていればいずれ回復するものなのか、ダメなAIのせいで今後もどんどん負けが重なるようなものなのかは、結局人間が判断する必要があります。
もっともこれも貯蓄と消費と資産運用のバランスまで考えてくれるAIやAI投資の結果を監督するAIが開発されるまでの間のことですが。