グローバル化社会の意味とは|メリットデメリット、国際化の課題を簡単に解説
グローバル化社会の意味
グローバル化社会とは簡単にいうとグローバル化(グローバリゼーション)が進んだ社会のことです。
そして、グローバル化とは財やサービス、資本や労働(人材)が国の枠を超えて行き交うことを意味します。
このグローバル化社会のメリットデメリット、そして国際化の課題について考えてみます。
グローバル化のメリットデメリット
では、グローバル化社会のメリットとデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
グローバル化(グローバリゼーション)のメリット
資源配分の効率化が進められる
経済学者のリカードの比較生産費説によれば、貿易の対象となる2財の間で、2国間の相対的な生産性(比較生産費)が異なる場合、財の価格比が両国の比較生産費の間にあれば、両国が貿易をすることで利益が得られるとされます。
また、国際経済学のミクロ分野では、関税を撤廃して自由貿易を行った方が、関税政策をとる場合や貿易を行わない場合に比べて、社会全体の利益(余剰)が大きくなるとされます。
このように、経済がグローバル化し、自由に貿易を行うようになることで、資源配分の効率化が進むというメリットがあります。
低所得な国での所得の上昇が期待できる
所得水準の異なる国の間で貿易や移民が行われれば、貿易などにより低所得な国の所得水準の向上が期待できます。
21世紀になってからの発展途上国の発展はグローバル化のこのようなメリットによるところも大きいといえます。
少子化対策となる
日本のように少子高齢化が問題になっている国においては、グローバル化として移民や外国からの定住者を増やすことで、少子化対策となるといえます。
グローバル化(グローバリゼーション)のデメリット
国内産業が育たない
グローバル化により、貿易を行うということは不得意な産業については外国に任せるということを意味します。
そのように外国に任せてしまった産業はいつまでたっても得意にはならないとため、国内産業の育成が難しいというデメリットがあります。
高所得な先進国において低付加価値の労働が外国人労働者や外国製品に代替される
グローバル化により、財・サービスの貿易や労働力の移動が促進されることにより、先進国の国内で低付加価値の労働に従事していた人の雇用やそれらの人が生み出す財が外国製品や外国人労働者により代替される可能性があります。
これは社会全体では効率化が促進されることになりますが、代替されてしまう産業の労働者や企業にとっては既得権がおびやかされることになります。
外国人犯罪への不安が高まる
移民が増えると犯罪が増えるという因果関係が証明されているわけではありませんが、それを懸念する人は確かに存在します。
そのような外国人の犯罪に対する不安の高まりは社会の分断を生むおそれがあります。
世界的に好不況の波の影響が大きくなる
グローバル化が進むということは世界が均質化するということです。
グローバル化には上記に示したようなメリットのように経済の効率化が進みます。
そのため、グローバル化が進んで一つになった世界とグローバル化が進んでいない閉じた複数の国やブロックの集まりからなる世界とでは、グローバル化の進んだ世界の方が経済の成長は大きくなると思われます。
ですが、一つになった世界では「コケるときは皆コケる」形で不況の谷はより大きく、期間はより長くなるのではないかと懸念されます。
投資理論や経営学では、投資や事業(ビジネス)で、複数の投資対象や事業を手がけることで、失敗するリスクを分散することをポートフォリオ効果といいます。
世界を統一せず、複数の国やブロックで棲み分けている状況はちょうどポートフォリオを組んでいるような形となり、投資やビジネスと同じようなポートフォリオ効果が国家単位でも働くことが期待できます。
通常、経済学ではブロック経済というと悪いものだとされることが多いです。
ですが、仮に経済をブロック化していれば、ある国(ブロック)で不況が生じたとしても、それがほかの国(ブロック)に及ぼす影響は小さくなります。
もちろん経済の効率性や成長性の観点からすると、グローバル化を推し進めて(極論すれば)世界を統一した方がいいといえますが、それは投資やビジネスにおいて1つの銘柄を一点買いし、単一のビジネスに注力する一本足打法にほかなりません。
そのため、過度なグローバル化は社会の画一化を進め、ポートフォリオ効果の働きを阻害し、経済の安定性を害する可能性が高くなります。
グローバル化による効率性や成長性とグローバル化しないことによるポートフォリオ効果は「あちらを立てればこちらが立たず」というトレードオフの関係になると考えられます。
そのため、両者のバランスを考えることが必要になってきます。
国際化の課題
グローバル化(国際化)の課題というのは、上記のグローバル化のデメリットの影響を抑えながら、グローバル化を進めていくことだといえます。
関税の撤廃と生産補助金
世界全体の効率性や成長性のためには関税は撤廃すべきです。
ですが、単に関税を撤廃しただけでは、デメリットでみたように国内産業が育ちません。
国内の産業を育成するためには、関税の撤廃に合わせて、生産補助金を交付するのが望ましいといえます。
生産者に直接補助金を交付するという生産補助金も経済への悪影響(死荷重)は生じます。
ですが、生産補助金の方が関税よりも効率性への悪影響が少ない(死荷重が小さい)ので、全体の効率性と国内産業の育成を両立するためには、財政の制約を考えつつ、生産補助金を交付すべきだと考えられます。
外国人犯罪への対策
また、移民などによる外国人犯罪の懸念についてですが、移民規制に限らず、すべての規制についていえることですが、入口で締めるよりは出口で締めるべきだとされます。
(実際に問題が生じてからきっちり取り締まるという)出口で締める場合が問題が少ないとはいえませんが、利益を享受しながら問題に対処することができるのは、とりあえずやってみる(やらしてみる)出口で締める方だと考えられます。
もちろん欧州などでの移民による事件の被害などを鑑み、規制の度合いは強めるべきかもしれませんが、入口の段階で一律に規制するのは妥当とはいえません。
なお、実際に問題が生じた場合に出口の段階でどのように規制するかにもよりますが、防犯カメラの配備や指紋や顔写真の採取・利用など、これらの規制はプライバシーを侵害するおそれが高いです。
その意味でプライバシーの保護と安全な社会の実現は、抵触するおそれがあります。
ビッグブラザー的社会が望ましくないのはその通りですが、安全な社会を実現するためには、ある程度のプライバシーの領域への侵食は是認すべきなのかもしれません。
グローバル化の進展は時間の問題!?
ガンダムではありませんが、今後数世紀のどこかの時点で地球連邦政府(≒世界単一政府)は実現するはずです。
そのときには多分、関税や移民などのすべての規制はいまのEU域内間の移動程度になっていると思われます。
そういった意味では、(トランプ政権やブレグジットのような揺り戻しはあるものの)グローバル化の進展・完成は時間の問題といえるかもしれません。
現代に生きる私たちのできることは、その移行をいかにスムーズに行うのかを自分たちの問題として考えることだと思われます。