米国雇用統計のFXへの影響|ドル円は円高?円安?戦い方の戦略は
アメリカ(米国)の雇用統計の意味とは
アメリカ(米国)の雇用統計とは、アメリカの労働省(U.S. Department of Labor Bureau of Labor Statistics)が毎月発表するアメリカの雇用に関しての経済統計です。
この雇用統計の中でも、特に「非農業部門就業者数」と「失業率」が重視されています。
これらの指標は、連邦準備銀行(FRB)の金融政策の意思決定に対しての影響も大きく、ドル円などのFX(為替相場)への影響も大きいとされています。
このアメリカ雇用統計をいかに活用するか、雇用統計の戦い方の戦略について考えてみます。
米国雇用統計の日程はいつ?
アメリカ(米国)の雇用統計は毎月第1金曜日に発表されるといわれていますが、正確には前月の12日を含んだ週を基準とし(第0週の基準週として)、そこから3週間後の金曜日に発表されます。(日曜日から土曜日までを1週間として考えます。)
そのため、中には雇用統計が第2金曜日に発表される場合もあります。
なお、1月については、いわゆる三が日である1月1日から1月3日までに3週間後の金曜日がくるときは、基準週から4週間後に発表をズラしているようです。
アメリカ雇用統計の増加・減少とFX(ドル円)への影響は
このようなアメリカ(米国)の雇用統計をもとにFXをトレードするとして、どのようなトレード方法をとればいいのか、雇用統計の戦い方を検証します。
今回はFX(東京ドル円)について、米国雇用統計の発表日の金曜日を終値とする特殊な月足(これを雇用統計足とします)を想定し、米国雇用統計の数値が次の足(発表の翌週を始値とする雇用統計足)の上げ下げにどのように影響するかを考えてみます。
なお、雇用統計足の始値は雇用統計発表の翌週の月曜日だということは、雇用統計足は雇用統計発表直後のインパクトを除いていると考えることができます。
ですから、今回の検証は、雇用統計の発表直後の値動きを捉えるものではなく、どちらかというとスイングでポジションをとるような週末トレーダー向けの検証になります。
ちなみに、2013年10月および11月に発表された雇用統計は予算の承認問題の関係で上記のカウント方法とは異なる日に発表されましたが、今回の検証では、2013年10月・11月のデータはイレギュラーとして検証から除いています。
雇用統計の影響の検証方法・検証結果
今回、米国雇用統計の為替(ドル円)への影響を検証した検証方法は以下のとおりです。
- 「非農業部門就業者数」と「失業率」について、増加(上昇)した月を1、減少(下落)した月を-1、変化がなかった月を0とする
- 「非農業部門就業者数」と「失業率」の増加(1)・減少(-1)・変わらず(0)の組み合わせで、3×3のマトリックスをつくる
- 各マトリックスに該当する月の翌月の雇用統計足の(雇用統計発表翌週の)始値から(雇用統計発表直前の)終値までの変動率の平均を算出する
以上にもとづいた検証結果は 以下のようになります。
表の縦軸が「非農業部門就業者数」で、横軸が「失業率」になります。
「非農業部門就業者数」のFX(東京ドル円)への影響
まず、縦軸の「非農業部門就業者数」とFX(東京ドル円)だけで影響をみてみます。
そうすると、「非農業部門就業者数」が増加(1)している月は、タテの総計にあるように為替は上昇(円安)方向に変動することがわかります。
一方で、「非農業部門就業者数」が減少(-1)または変わらない(0)月は、タテの総計によると東京ドル円は下落(円高)方向に変動するといえます。
一般に、「非農業部門就業者数」の増加は、景気が好調であることを意味し、「非農業部門就業者数」の減少は、景気が悪化していることを意味するとされます。
景気がよくなれば、いわゆるリスクオンの状態となり、投資家のリスク志向が高まります。
反対に、景気が悪化すれば、いわゆるリスクオフの状態となり、投資家はリスク回避的になります。
リスクオンになると、安全資産である円が売られて、為替が減価し円安方向に変動します。
一方、リスクオフになると、安全資産である円が選好され買われ、為替は増価して円高方向に変動します。
これは一般に、教科書でいわれているようなことですが、それが検証によっても確認できたことになります。
「失業率」のFX(東京ドル円)への影響
次に、横軸の「失業率」とFX(東京ドル円)の影響について考えてみます。
「失業率」が下落(-1)している月は、ヨコの総計欄で東京ドル円は上昇(円安)していることがわかります。
一方で、「失業率」が上昇(1)または変わらない(0)月は、ヨコの総計では為替が下落(円高)するといえます。
一般に、「失業率」は低下すれば、好景気をしめし、上昇すれば、不景気をしめします。
好景気でリスクオン、不景気でリスクオフになるのは、さきほどと同じです。
リスクオンになると、安全資産である円が売られ円安になり、リスクオフになると安全資産である円が買われて円高方向に変動します。
こちらも教科書的な内容ですが、検証でも確認できました。
「非農業部門就業者数」および「失業率」のFX(東京ドル円)への影響
次に、雇用統計の中の「非農業部門就業者数」と「失業率」を組み合わせたマトリックスと東京ドル円の影響を考えてみます。
まず、どちらも好景気をあらわす「非農業部門就業者数」の増加(1)と「失業率」の低下(-1)の左下の組み合わせでは、当然ながら為替は上昇(円安)となります。
また、どちらもが不景気を意味する「非農業部門就業者数」の減少(-1)と「失業率」の上昇(1)の右上の組み合わせは、こちらも個別の検証と同じ結果である為替の下落(円高)になります。
これに対し、どちらか一方が変わらず(0)となる組み合わせ表ではちょうど「十字」を描くように4つありますが、これはどれも為替の下落(円高)となっています。
この理由は、好調であることがあきらかとはいえない場合、投資家は慎重になり、リスクオフの傾向が強まるためであると考えられます。
なお、過去の統計では「非農業部門就業者数」も「失業率」もどちらも変わらずという(0)と(0)の組み合わせは存在しませんでしたが、上記のような理由からすれば、将来この組み合わせが仮に生じた場合は、下落(円高)となる可能性が高いと考えられます。
さて、問題は、「非農業部門就業者数」と「失業率」で好景気と不景気の動きがバラバラになるケースです。
まず、左上は「非農業部門就業者数」が減少(-1)で不景気をしめす一方、「失業率」は低下(-1)し好景気を示唆するケースですが、この場合は為替は失業率の改善の影響が勝つのか上昇(円安)となっています。
これに対し、右下の「非農業部門就業者数」が増加(1)して好景気をしめしながら、「失業率」は上昇(1)することで不景気をしめすというケースでは、為替はこちらもやはり失業率の影響が勝ち下落(円高)となっているのがわかります。
以上から、「非農業部門就業者数」と「失業率」で景況判断の示唆がわかれた場合は、「失業率」を優先して判断するといいことがわかりました。
アメリカ(米国)の雇用統計の影響をもとにしたFX(ドル円)の攻略戦略のお話は以上になります。