企業城下町とは|企業城下町のメリットデメリット|企業と自治体のあるべき姿は

地域経済

企業城下町とは

企業城下町(きぎょうじょうかまち)とは、ある特定の1つの企業や工場を中心として、関連企業や下請け企業が集まる形で発展している都市(自治体)のことをいい、カンパニータウンともよばれることがあります。

このような都市や地域を江戸時代の城下町にちなんで企業城下町とよんでおり、企業城下町という言葉は、経済学や地理学でも用いられることがあります。

企業城下町に、共通した教科書的な定義は存在していませんが、中小企業庁の「中小企業白書」によれば、企業城下町は、地域産業集積の類型の1つであるとされます。

産業集積というのは、特定の地域内に多数の企業が立地しており、各企業間で相互の取引や情報交流、連携などが盛んに実施されている状態のことです。

地域産業集積には、ほかには福井県鯖江市の眼鏡産業のような産地型集積などがあります。

企業側からみた企業城下町のメリット・デメリット

企業城下町を形成している企業にとって、企業城下町という産業集積のメリットとはなんでしょうか。

ここでは企業城下町のメリットデメリットを企業側の視点で考えてみます。

企業側の企業城下町のメリット

企業側の視点からみて、企業城下町には以下のようなメリットがあります。

  1. 産業集積として関連産業が集まっているため、地域内で効率的な生産が可能となる
  2. 企業城下町が郊外地域に存在する場合、都心部に比べ相対的に地価や人件費が安く、新規の設備投資や開発のコストが低くおさえられる
  3. 地域から愛される存在となることで、地元に根強いファンを持つことができる

企業側の企業城下町のデメリット

一方で、企業側の視点からみた企業城下町のデメリットは以下のようなものになります。

  1. 経済のグローバル化にともない、外国企業を含めた企業城下町以外の企業との取引が盛んになるにつれ、郊外に立地していることを理由とする輸送や情報交換、取引に要するコストが高くなってきている
  2. 企業城下町内で閉鎖的な社会が形成されており、企業城下町内における取引関係に最適化する結果、(局地的なガラバゴス化が生じ、)最適な資源配分の意思決定が害されるおそれがあるとともに、グローバル化への対応が遅れがちとなる

企業側のとるべき戦略

経済のグローバル化の進展から、企業城下町を維持する合理性は以前よりも薄れてきています。

地元や集積内の企業との長期的な関係は地理的な近さからくる直接的なコストの削減効果のみならず、信頼関係というみえない形としても、その企業を支えるものであり大切にすべきものだといえます。

ですが、一方で、世界全体を見渡した最適な資源配分の視点も欠かせません。

中心企業としては両者のバランスを意識した生産および事業配分の計画が求められると考えられます。

一方、企業城下町内の関連企業にとって、経済のグローバル化は最悪、親会社や元請けである中心企業から「切られる」リスクを高めています。

そのため、関連企業は、従来の企業城下町内で完結する取引関係から離れた新たな取引先や製品分野の開発を積極的に進めていく必要があると考えられます。

地域の立場からみた企業城下町のメリット・デメリット

一方で、企業城下町の存在する地域や自治体、住民の側からみた企業城下町のメリットとデメリットにはどんなものがあるでしょうか。

地元側の企業城下町のメリット

地元にとって企業城下町が存在することのメリットには以下のものがあると考えられます。

  1. 企業城下町を構成する多くの企業からの税収雇用が期待できる
  2. 病院や運動施設、文化施設など本来自治体が整備すべき事業を企業の負担で実現できる場合もある
  3. 地域に不足しがちな就職先を確保できるため、人口減少を和らげることができる
  4. (おまけ)地元民だと就職とかで有利になる(かもしれない)

地元側の企業城下町のデメリット

これに対し、地元からみた企業城下町のデメリットは以下のようになります。

  1. 特定の企業および産業に対する依存度が高くなり、地域の先行きがその企業や産業の業績次第となるリスクがあり、税収や雇用、人口問題など地域の多くの問題が1企業に左右されることになる
  2. (おまけ)その企業の製品を使わないと非国民あつかいされる(かもしれない)
  3. (おまけ)その企業の関係者と非関係者の関係が悪くなる(かもしれない)

地元側の自治体のあるべき姿

やはり地元側としては、特定企業への依存度によるリスクを緩和する必要があるため、地元の自治体としては、中心企業のことだけを向いた施策をするのではなく、ビジネス全般を盛り上げる形での親ビジネス的な施策が求められると考えられます。

そうすることで産業集積としての厚みを増し、特定企業や産業の動向に影響を受けにくい体質に変えていくことが求められます。

企業城下町の具体例

企業城下町にはどのようなものがあるでしょうか。いちばん有名な企業城下町は、トヨタ自動車を中心とする愛知県豊田市がよく知られていますね。豊田市はもともと挙母(ころも)という地名でしたが、トヨタ自動車にちなんで豊田に改名されました。また、日立製作所を中心とする茨城県日立市も有名です。

ほかにも企業城下町は全国に存在しています。ここでは有名な企業城下町の中から一部を紹介します。

地域・自治体企業名証券コード産業
愛知県豊田市トヨタ自動車7203自動車産業
茨城県日立市日立製作所6501電機
福島県会津若松市富士通6702電機
石川県小松市小松製作所(コマツ)6301建設機械
広島地域マツダ7261自動車産業
福岡県北九州市新日本製鐵(日本製鉄)5401鉄鋼業
宮崎県延岡市旭化成3407総合化学

(おまけ)企業城下町はモテる?

企業城下町でその企業グループの社員はモテるのでしょうか?

最近はシビアですので、企業城下町の企業グループに勤めているといっても、正社員なのか、非正規なのか、本体なのか、子会社、関連会社なのかで相手の(内心の)反応は違ってくると思われます。

その上で、企業城下町の本体企業のホワイトカラー正社員が他の同レベルの会社の社員と比べてモテるのかですが、(あくまで推測ですが)モテ度にはあまり違いはないのではないでしょうか。

たとえば、自動車業界トップのトヨタ自動車の企業城下町である愛知県豊田市でトヨタの社員が(他の業界トップ企業である)三菱商事やMUFGの社員よりもモテるのかということですが、多少違いがあるかもしれませんが、それは個人差を覆すほどではないと思われます。

一方で、仮に企業城下町で親と同居しているお相手とお付き合いを進めていく上で、親に対しては企業城下町の社員であるということは信用という点ではそれなりに大きな力になるはずです。(もしかしたら親も同じ会社の社員かもしれませんし。)

そういった点から、真面目にお付き合いするのであれば(モテとは違うかもしれませんが)企業城下町の社員であることは一応プラスに働くと考えてもいいと思われます。

進化する企業城下町