期待値の経済学における意味とは|期待効用仮説の理論と計算の公式(求め方)
期待値の経済学における意味と計算の公式(求め方)
期待値とは、経済学の理論でリスクがある場合のお話として出てきます。
従来の経済学では、通常Aという行動をとれば、必ずBという結果が得られるとして考えます。
たとえば、100円の財(商品)を買えば、必ずそれに見合った結果(この場合は満足)が得られると考えるのが、従来の経済学の考え方になります。
ですが、リスクがある状況では、必ずしも同じだけの結果が得られるとは限らないことになります。
ここでいうリスクというのは、たとえば、60%の確率で成功するけど、残りの40%の確率で失敗するような状況をいいます。
このようなリスクのある状況を考える理論を経済学では、期待効用理論(期待効用仮説)とか、期待効用最大化仮説といいます。
期待効用理論(期待効用最大化仮説)の論者はフォンノイマンとモルゲンシュテルンです。
期待効用理論における期待値の具体例
期待値についてわかりやすく具体的な例で考えてみます。
たとえば、60%の確率で100円がもらえるけど、残りの40%の確率で0円で何ももらえないというくじや賭けについて考えてみます。
このくじは得になるか、何ももらえないかというものなので、やるかやらないかでいえばやったほうが良いくじだといえます。
このようなくじの結果の平均として計算される値のことを期待値といいます。
くじの期待値とは、わかりやすくいえば、だいたいこのくらいもらえるだろうという期待される値のことです。
この期待値の求め方は、それぞれの確率に結果かけた合計となります。
期待値の計算例
例:60%(確率1)で100円(結果1)、40%(確率2)で0円(結果2)というくじの期待値の計算
このくじの期待値はそれぞれの確率に結果をかけ合わせた合計として計算されます。
くじの期待値=0.6×100円+0.4×0円=60円
ですから、このくじを何回も引けばだいたい60円くらい儲かりそうだなといえることになります。
期待値の求め方(計算の公式)
この期待値の求め方として計算を公式化すると以下のようになります。
期待値=(確率1 × 結果1)+(確率2 × 結果2)
この期待値の計算の公式は、確率に応じた結果の平均をとっているというイメージになります。
期待効用の意味と求め方(計算の公式)
では、このようなくじがあったとして、このくじを引いた場合の満足度はどうなるでしょうか。
経済学では満足のことを効用といいます。
このくじの効用の求め方を考えてみます。
さきほどの例のようにくじの結果が確率で変化する場合、くじの効用も確率によって変化することになります。
ですから、くじの結果が期待値で計算されたのと同じように効用も期待値で計算されることになります。
この効用の期待値のことを期待効用といいます。
期待効用の定義と計算の公式(求め方)
期待効用
効用の期待値のこと(言葉による定義)
期待効用=(確率×効用)の合計(数式による定義(=公式))
それぞれのくじの確率に結果に対応した効用をかけ合わせて計算した値を合計したものが期待効用になります。
くじを何回も引いた場合にだいたいこれくらいの効用になるよねというのが期待効用の意味になります。
期待効用の計算の具体例
では、期待効用の求め方についても具体例で考えてみます。
たとえば、効用関数が
$$U=\sqrt{x}$$
で表されるとします。
このとき、さきほどのくじの期待効用はどのように計算されるのでしょうか。
さきほどと同様、60%の確率で100円がもらえるけど、残りの40%の確率で0円で何ももらえないというくじを引くとします。
ここで100円もらった場合の効用は、
$$\sqrt{100}=10$$
なので、10になります。
一方で、0円となり何ももらえなかったときの効用は、
$$\sqrt{0}=0$$
なので、0になります。
よって、この場合の期待効用は、
$$0.6×\sqrt{100}+0.4×\sqrt{0}=6$$
で6と求められます。
つまり、このくじを何回も引くとだいたい効用は6になるんだということがいえることになります。
このように確率に応じた効用の平均を計算するというのが期待効用の求め方のイメージです。
以上のように、結果が確率に支配されている場合の効用というのは期待効用で表されることになります。
このような理論を期待効用理論(期待効用最大化仮説)といいます。
期待効用理論(期待効用最大化仮説)の計算問題(例題)
期待効用理論(期待効用仮説)を理解するために、計算問題の例題を考えてみます。
期待効用理論の計算問題では、保険や株価、不動産投資などの形で問われます。
保険に入ったり、株や不動産を買ったりするのに事故が起きる確率や株価(または不動産価格)が上昇する確率がどれだけあればよいかという問題が典型的なパターンになります。
例題:ある個人の資産を400とし、資産の全額で株を購入することを検討しているとする
株が上昇すれば、この個人の資産は900になるが、株が下落した場合は資産が100になるものとする
資産額をxとした場合、この個人の効用が
$$U=\sqrt{x}$$
で表せるとすると、この個人は株が上昇する確率が何%なら株を購入するか。
まず、この個人が株を買わない場合は、もともとの資産である400がそのまま残ってきます。
そのため、この場合の効用は、
$$\sqrt{400}=20$$
で、20となります。
一方で、株を買う場合の効用を考えてみます。
株が上昇すれば、資産は900となるので、この場合の効用は
$$\sqrt{900}=30$$
で、30になります。
これに対し、株が下落すると、資産は100になってしまうので、この場合の効用は
$$\sqrt{100}=10$$
で、10となります。
株が上昇する確率をPとすると、株を買った場合のこの個人の期待効用は
$$P×\sqrt{900}+(1-P)×\sqrt{100}$$
となります。
株が下落する確率は、全体の100%(=1)から上昇する確率であるPを引いた1-P
を使います。
この個人が株を買うのは
(株を買う場合の効用)≧(株を買わない場合の効用)
となるときなので、
$$P×\sqrt{900}+(1-P)×\sqrt{100}≧\sqrt{400}$$
30P+10(1-P)≧20
が成立します。
これを解くと
P≧0.5
となるので、株が上昇する確率が50%以上であれば、この個人は株を買うことになります。
😏「あらかじめ株が上昇する確率がわかってるなんでファンタジーですけどね。」
期待値の経済学における意味のまとめ
期待値と期待効用の式をしっかりと理解しておけば、期待効用最大化仮説の問題は解くことができます。
最後にまとめておくと、
期待値は確率×結果の合計であり、確率に応じた結果の平均をとっていることを意味します。
一方で、期待効用は確率×効用の合計であり、確率に応じた効用の平均をとっていることを意味しています。
以上が経済学における期待値と期待効用のお話になります。