マクロ経済学は難しすぎる!?ミクロ経済学より難しい2つの理由と対策
マクロ経済学とは何かをわかりやすく解説
経済学には、ミクロ経済学とマクロ経済学という2つの領域があります。
ミクロ経済学とは、1つの産業を対象に効率性を分析するものです。
たとえば、自動車なら自動車、コンピュータならコンピュータという1つの産業を対象に分析するものがミクロ経済学になります。
そして、余剰分析という方法により、消費者と生産者といったミクロ経済学の登場人物たちの利益(≒余剰)の合計が最大になることが効率的だとします。
これに対し、何らかの理由で余剰の合計が小さくなる場合、(これをミクロ経済学では死荷重といいます。)、効率的ではないと考え、政府が課税や補助金を行うことで調整します。
一方で、マクロ経済学とは、ある国全体の経済活動を対象に効率性を分析するものです。
マクロ経済学では需要や失業率が適正な状態というのが効率的であり、需要が小さすぎたり、失業率が高い状態は効率的ではないとされます。
そして、この場合はミクロ経済学と同じように政府が登場することになります。
マクロ経済学のほうが難しい!?
ミクロ経済学とマクロ経済学ではマクロ経済学のほうが難しいと感じる人が多いようです。
😥「マクロ経済学難しすぎる」
😰「マクロ経済学がわからない」
そこで、マクロ経済学の全体像について説明しながら、マクロ経済学のどこが難しいのかということを説明し、マクロ経済学が難しすぎて挫折しそうという人向けの対策を紹介します。
マクロ経済学の全体像(体系)
まずはマクロ経済学の全体像について説明します。
マクロ経済学には、
- 国民経済計算
- 45度線分析
- IS-LM分析
- AD-AS分析
- 国際マクロ経済学
- マクロ経済学の学派
などの分野があります。
このそれぞれの内容は以下のようになります。
国民経済計算
国民経済計算は、国民所得といわれるGDPやGNIなどに関する統計のお話です。
マクロ経済学で、効率性を考えるモノサシとして国民所得というものがあります。
つまり、国民所得というのは、ある国全体の経済活動が大きいか小さいかを表すモノサシを意味します。
この国民所得を表す具体的な数値がGDPとかGNIといわれるものになります。
よく日本のGDPが何兆円だったとか、何%上がったとかニュースでやっています。
そのGDPやGNIに関するお話です。
このGDP、GNIという数字をどう決めるかという統計のお話が国民経済計算になります。
45度線分析
次に、45度線分析というのは財市場について分析するものです。
財市場とは、財やサービスの需要と供給から国民所得を決定する市場です。
ミクロ経済学では、自動車やパソコンなどの個別の財を対象に分析していきます。
これらの市場をひっくるめて財市場といいます。
ミクロ経済学が個別の市場の需要と供給について分析をするのに対し、一国全体の需要と供給について分析するのが45度線分析になります。
45度線分析では、一国全体の需要と一国全体の供給から最適な国民所得を決めることになります。
このように45度線分析というのは財市場を分析して、最適な国民所得の水準を決めるものだよということになります。
IS-LM分析
次に、IS-LM分析というのは、財市場と貨幣市場を同時に分析するものです。
貨幣市場というのは、貨幣の需要と供給から利子率を決定する市場のことです。
貨幣にも普通の財と同じように需要と供給があります。
この貨幣の需要と供給から最適な貨幣の量と(貨幣の価格にあたる)利子率を決めるのが貨幣市場になります。
この貨幣市場と財市場を同時に分析して、最適な国民所得と最適な利子率を決めるのがIS-LM分析です。
AD-AS分析
AD-AS分析とは、財市場と貨幣市場と労働市場を同時に分析するものです。
労働市場とは、労働の需要と供給から雇用量を決定する市場です。
労働者は働くことで労働を供給し、企業は労働者を雇うことで労働を需要します。
この労働の需要と供給から最適な雇用量を決めるのが労働市場になります。
この労働市場と財市場と貨幣市場を同時に分析して、最適な国民所得を決めるのがAD-AS分析になります。
労働市場において労働を供給するのは、財市場において財を需要する消費者(労働者)です。
一方、労働を需要するのは、財市場における供給者である生産者(企業)です。
労働市場では、需要と供給の主体がいつもと逆になりますので注意します。
国際マクロ経済学
国際マクロ経済学というのは、国際経済学のマクロ分野です。
為替レートなどを利用して、外国との間のお金のやり取りを分析するものになります。
この分野には、IS-LM-BP分析などがあります。
マクロ経済学の学派
マクロ経済学は、ミクロ経済学に比べ、古典派、ケインズ経済学、マネタリストなどといった学説ごとの違いが大きく、それぞれの理論で結論が大きく異なります。
これらの学説ごとの理論の違いをきちん整理しておくことが、マクロ経済学の理解を深めるコツです。
その他のマクロ経済学の分野
マクロ経済学には、このほかに物価と失業の関係などについて論じるフィリップス曲線、IAD-IAS分析(インフレ需要曲線・インフレ供給曲線分析)や経済成長について考える経済成長論などがあります。
以上がマクロ経済学の体系になります。
マクロ経済学が難しい理由
最初に述べたとおり、ミクロ経済学に比べて、マクロ経済学の方が難しい(わからない)という人が比較的多いです。
😥「マクロ経済学難しすぎる」
その理由は2つあります。
理由その1:分野ごとのつながりが強い
1つはマクロ経済学は分野ごとのつながりが強いからです。
ミクロ経済学は、どちらかというとそれぞれの理論を別個に理解していけばよかったのですが、マクロ経済学は違います。
IS-LM分析は、45度線分析を前提としていますし、AD-AS分析は45度線分析とIS-LM分析を前提としています。
このように、マクロ経済学では前の分野が次の分野の前提になっていることが多く、前の分野の理解がおろそかだと、次の分野もよくわからないということになりがちです。
特にその傾向が強いのが、45度線分析→IS-LM分析→AD-AS分析という流れになります。
また、これらのあとで勉強する国際マクロ経済学などでもIS-LM分析の知識が必要となるため、前の範囲の理解がマクロ経済学では重要になります。(ちなみに国民経済計算は比較的独立しています。)
そのため、これらの分野については、一連の流れにそって理解していくことが大切です。
理由その2:学派の対立
もう1つマクロ経済学が難しいとされる理由が、学派の対立です。
ミクロ経済学には、学派による対立はほとんどみられませんが、マクロ経済学では大きく古典派とケインズ経済学(ケインジアン)という学派の対立があります。
簡単にわかりやすくいうと、古典派は供給を重視し、市場を信頼するため政府の政策を不要とするのに対し、ケインズ経済学が需要を重視し、市場に対する不信感があるため政府の積極的な介入を認める立場に立ちます。
マクロ経済学では、それぞれの論点に対して結論と理由を学派ごとに整理する必要があり、慣れないうちは混乱しがちです。
これらがマクロ経済学を難しくしている理由になります。
マクロ経済学が難しすぎると感じている人向けの処方せん
以上から、マクロがミクロに比べて難しい理由は、分野ごとのつながりが強く、理論の流れを理解する必要がある点と学派の対立があり、学派ごとの整理が必要になる点にあるといえます。
ですので、マクロ経済学が難しすぎる(わからない)と感じている人は、45度線分析からIS-LM分析、AD-AS分析にかけての流れの理解ができていないか、ケインズ経済学、古典派、マネタリスト、合理的期待形成仮説といった学派の整理ができていないかのいずれか(もしくはその両方)だと思われます。
まずは流れの理解と学派の整理どちらが問題なのかをはっきりさせます。
その上で、45度線分析からIS-LM分析、AD-AS分析にかけての流れの理解ができていない場合は、それぞれの分析が扱っている市場(財市場・貨幣市場・労働市場)のどこがわからないかを明確にした上で、わからない分野を重点的に復習します。
また、ケインズ経済学と古典派の学派の整理が怪しい場合は、まずは試験でよく出るケインズ経済学(ケインジアン)だけをしっかり勉強することをおすすめします。その上で、古典派やマネタリストなどのほかの学派について勉強するのが良いと思われます。
復習するときは、テキストや問題集よりも薄めのレジュメやサブノートで復習したほうが効率的ですのでおすすめです。
レジュメやサブノートで理解を深めてから、テキストや問題集にあたってみましょう。