国際経済

米中の関税合戦の意味するもの

米中の貿易戦争

米中の関税合戦の意味するもの

2018年、アメリカのトランプ政権は中国に対し、自動車などを対象に25%もの追加関税を課すとしました。

これに対し、中国も大豆などに対し報復関税を課すことを発表し、米中間は互いに高率の関税を課し合うという貿易戦争の状態へと突入しました。

経済学において、関税政策は関税をかけない自由貿易に比べ、社会的な利益である余剰を減らしてしまうことから望ましい政策とはいえません。

関税の余剰分析
関税の余剰分析|経済学の関税政策の効果は死荷重を生じる国際貿易の理論 ミクロ経済学における国際貿易の分野における自由貿易や関税政策、輸入割当について余剰分析の考え方によりみていきます。 ...

「貿易戦争の勝者は誰もいない」といわれているのはそのためです。

ただし、アメリカも中国も大国ですので、大国のケースでは、関税政策がその国にとって有利になる場合があります。

ここでいう有利というのは、関税により国内の価格が上昇し、生産者を守ることができることだけを意味するのではありません。

大国のケースでは、関税をかけた結果、自由貿易よりも社会全体の利益である総余剰が大きくなる場合があり得るということを意味します。

大国のケースにおいて関税政策が総余剰を増大させるメカニズム

関税により国内の価格が高くなります。

国内の価格が高くなれば、国内の需要は減少します。

大国の場合、この国内需要の減少が、世界経済にも影響を及ぼし、世界全体の価格である国際価格が低下することになります。

需要が減ることで価格が下るというメカニズムが世界全体で働くわけです。

関税は国内の流通価格を高くして生産者を守るためにかけるものですから、海外価格が低下した場合、その分、より高い関税が必要になります。

この高い関税による関税収入は政府の利益(政府の余剰)ですから、社会全体の利益である社会的余剰の一部を構成します。

つまり、高い関税によって増えた関税収入の分だけ、社会的余剰が大きくなるわけです。

この大きくなった社会的余剰によって、関税をかけたせいで生じる非効率さ(これを経済学では死荷重(Dead Weight Loss)といいます)を超える利益がもたらされる場合には、関税をかけた方が自由貿易よりも社会全体の余剰である総余剰が大きくなることになります。

このようなメカニズムにより、(いつもではありませんが、)大国の場合、関税をかけた方が有利になることがあるのです。

関税合戦は世界全体では結局は損のほうが大きい

ただし、この場合も、得をするのは大国だけです。

大国の関税政策により、世界的な需要の減少がもたらされ、それが世界経済を停滞させてしまうため、結局、世界経済全体で考えると不利益のほうが大きくなります

今回の米中の貿易戦争は、政治的な要因や知的財産権の軽視といった関税以外の中国側の不公正な取引慣行なども影響しているため、どのような結末になるかは不明です。

ただ、関税政策自体は大国にとっては有利となることもあるため、まわりの小国にとってはいい迷惑ですが、アメリカも中国も安易に踏み切っているのかもしれません。